11.揺れ動く心

翌朝は、気分も良く元気につばさは登校した。
そしてそれは、その日だけでなく。
まるで、悪夢などなかったかのように夢を見る事もなく。
普段通りの生活を送っていた。
そんな中、つばさは1人の少女に呼び出された。
「あの、何でしょうか?」
「柳くんと一緒に居るけど、付き合ってるの?」
「友人です」
「ああ、そうなんだ。なんだ、そっか…」
少女のその言葉に、つばさは内心ムッとする。が、何故自分がムッとするのか解らない。
そんなつばさの様子など興味ないとばかりに、少女は礼を述べるとその場を後にする。
少女の後ろ姿をつばさはぼんやりと見送り、息を吐き出す。


少し離れた場所では、そんなつばさの様子を見守る姿。
暫く様子を見守ると、踵を返し真っ直ぐ蓮二の元を訪れると。
「どうやら、如月は蓮二に無自覚ながら恋しておるようだぞ」
「フッ。まさか、弦一郎からそんな言葉を聞けるとは、な」
「何が可笑しい」
「ああ、すまないな。弦一郎、その少女を見張ってくれ。もし………」
「わかっておる」
「なら、頼むよ」
そんな会話を交わし、蓮二は外を見やる。
よく晴れた、夏の空。
もうすぐで夏休みがやって来る。
それまでには、全てに片を付ける。
「ジャッカル、丸井はどうした?」
「如月に手を出そうとしてる連中を、洗い出してる。柳生と仁王も一緒だ」
「なら、問題ないな」
純血種の吸血鬼など、数は年々減って行くばかり。
そんな中でも、一族を率いる長となれば花嫁を迎え、血を残さなければならない。
同族、とりわけ純血種同士の婚姻など今は難しい。
この数百年近くは、人の子を花嫁に迎えるのが慣習となっていた。
しかし、それを快く思わない者が居るのは確かであり。
何よりも、蓮二は一族の中で最年少であった。
年若い長も、花嫁を人の子だというのも認めないと。
つばさに手を出す者が現れても、おかしくはない。
「あと、もう少しだ」
呟きは誰に聞かれる事なく、蓮二は教室へと戻って行った。

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