9.ゆるやかに

朝起きると、倦怠感に包まれ。
けれど、どこかが悪いという事もない状態につばさは首を傾げるばかり。
一日を過ごしていると、喉が渇く事が多いが朝になると潤っている。
おかしな夢を見続けている事と、何か関係があるのか。
そんな事を考えながら登校するつばさの耳に、少女達の囁きが聴こえる。
ここ数日で、2人の少女が行方不明になっていると。
同じ学校の生徒で学年も一緒。
何か事件性でもあるのではないかと、噂をする声が後を絶たない。
「おはよう、つばさ」
「おはよう、桃ちゃん」
「ちょっ、大丈夫?顔色が悪いよ?」
「え?うん・・・大丈夫だよ」
途中で会った桃子と挨拶を交わし、顔色を指摘されて苦笑しながら答える。
「そんなに、悪いかな?」
「んー、いいとは言えないかな。あんまり調子良くないなら、ムリしない事。いい?」
「うん。ありがとう、桃ちゃん」
お礼を言いながら、つばさは桃子と他愛もない話をしながら教室へと向かう。
「そう言えば、聞いた?また、1人不明が出たんだって」
「え、じゃあ・・・3人目?」
「そっ。今度は、3年の人らしいよ。接点もないし、ウチの学校の子ばっかりでしょ?ちょっと、怖いよね」
「早く見つかるといいよね、みんな」
教室内でも、同じように数人が集まっては話をしている姿が見られる。
その内容は、ほとんどが不明になった少女の話。
「おはよう、2人とも」
「おはよ、柳」
「おはよう、蓮二くん」
「顔色が悪いな、つばさ」
「え?そうかな」
「ほら、やっぱり」
「少し休んだ方がいいのではないか?」
「ん〜。でも、授業が始まるし」
「先生には言っておくよ。柳、つばさを保健室まで連れて行ってよ。1人だと、行きそうにもないし」
「了承した」
「え?ええ!」
「はい、いってらっしゃい」
2人の結託の良さに、驚きながらも心配してくれている事に感謝をして、つばさは大人しく柳に連れられて保健室へと向かった。
「そんなに大げさにする事じゃないのに」
「だが、念の為に休んでおいた方がいいだろう。あまり身体が丈夫ではなかったのだろう?」
「そうだけど・・・・・・」
そんな事を話ながら保健室に行けば、保険医は離席中だった。
「使用許可書を書いておくから、寝ていろ」
「ん」
窓際のベッドに潜り込み、瞬く間につばさは眠りに就いた。
そんなつばさを見つめ、蓮二は窓に近付き開ける。
爽やかな風が吹き込んで来る。
揺れるカーテン、靡く前髪。
「少し、ムリをさせてしまったか」
呟きながら、優しく頭を撫でる。
あと、もう少し。
確実に、蓮二の計画通りに事は進んでいる。
何も、問題はない。
「アレ、何してるんスか?蓮二さん」
「学校では、先輩と呼べと教えた筈だか?赤也」
「あ、いっけね。で、何してるんスか?柳先輩」
「つばさが寝ているのを見てるだけだ。赤也こそ、何をしている」
「ドジって、怪我したんでその手当てに」
ヘラッと笑いながら入って来たのは、赤也。
蓮二の眷属になって、まだ日は浅い。
仲間内でも一番年若いせいか、弟のように扱われる事の多い赤也は、実は一番素直に蓮二に懐いていた。
それぞれが、様々な事情等があった上で蓮二の眷属となり。
眷属となっても、必ずしも付き従うワケでもない。
蓮二としても、それを咎めるでもなくそのままにしているが、だからこそ赤也は稀な存在であった。
「全く、気を付けないか」
溜め息を吐きながらも、手際良く手当てを行い。くしゃりと、髪を掻き回す。
「わっ。子供扱いしないで下さいよ」
「子供だよ、お前は。だが、それでいい」
「へ?」
「気にするな。柳生に伝えといてくれ、今晩は庭園で茶会にすると」
「了解ッス」
「それと、弦一郎に彼女達の報告をしに来るようにと」
「ウィース」
蓮二の言葉に、軽く返事をすると保健室を後にする。
再び静かな時間が戻り、蓮二はつばさを見つめる。
「今晩は、ゆっくり過ごそう」
微笑と共に、額に優しく口付け保健室を後にする。

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