9.許される唯ひとつの例外
「そうか」
「はい」
つばさの言葉に、ただ一言。
「社内恋愛禁止ではない。が、やはり上司と部下だからな」
「や、なぎ部長?」
「会社を出たら、部長は要らない。つばさ」
驚くつばさに、柔らかな笑みを浮かべて告げる柳。
その言葉が意味するのは、たった一つ。
役職で呼ばなくてもいい。
「え、っと・・・」
「蓮二、と呼んでくれないか?」
柔らかな声は、普段聞きなれているモノではなく。
甘さも含んだ声は、心地よい。
つばさは突然の展開に、戸惑いながらも。
「れ、蓮二?」
呼べば、嬉しそうに微笑まれる。
柳を役職でなく、苗字でもない。
名前で呼べる、許されたのは『彼女』という座の人間で。
部下であっても、その座に就いたつばさが許された唯ひとつの例外だった。
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