8.躊躇いの日々に手を振って
会社に行けば、それまでの余計な考えは頭から抜け落ちる。
つばさにとって、仕事はやりがいのあるもので。
大変ではあるが、楽しいモノでもある。
部長の柳の補佐として、下の者に指示を出す事もあるし。時として、アドバイスをする事もある。
何かあれば、相談に乗り。自分の手に余る場合は、柳に指示を仰ぎ、相談をする。
それでも、仕事の合間に同僚たちと交わす話や息抜きのお菓子タイムなどが、和みの時間。
想いを告げれば、何かが変わってしまいそうで。
それでも、時折見せる仕草が何なのか。
つばさは、戸惑う日々。
けれど、いつまでもこのままの状況には耐えられないのが、本音。
元々が、直球勝負な性格である。
久しぶりの残業は、他に誰も居ない。
社内に残っているのは、つばさと柳だけ。
「部長、仕事が終わったら。少し、お時間いいですか?」
「ああ、構わない。あと少しで終わるからな、如月。お腹が空いてるだろう」
「ご名答です、相変わらずですね」
「フッ。ならば、軽く食べながらでどうだ?」
「賛成です」
他愛もない話をしながらも、手を動かすスピードは落とさない。
そうして、仕事を終えて。会社を出て向かう先は、2人共に良く行く、和食屋。
軽く食べられるのと、店内が静かな事が気に入っている。
「それで、どうした?」
「私、柳部長の事が好きです」
頼んだ料理を前に、柳の目を見つめて真っ直ぐに想いを告げる。
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