5.どこかに灯るかすかな温もり

 結局、仕事は残っていたけれど。
 それ以上は、仕事にならないだろうからと。
 仕事を切り上げ、柳の車でつばさは帰宅した。
「仕事を頑張るのも、いいが。少しは、息抜きをするんだな」
「そうですね。今日は、すみません」
「不適切だな」
 柳の言葉に、一瞬きょとんとしたものの。
 すぐに、つばさは笑顔を浮かべると。
「ありがとうございました」
「ゆっくりと、休め」
「はい、お休みなさい」
 礼を言って、車を見送ってからつばさは自宅に入った。
 1人で暮らす家は、木造のアパート。
 防犯面としては、弱いのかもしれないが。つばさは、ここの大家が好きで引っ越す気になれずに居た。
 何かと、気にかけてくれる大家夫婦はもう1人の親のような気がして、つばさは今の暮らしを気に入っていた。
 部屋に入り、浴槽にお湯を張り。その間に、洗濯などを済ませる。
 両手・両足を伸ばして、息を吐き出す。
 頭には、柳に撫でられた感触。
 厳しい所もあるが、それだけではない優しい人。
 部下という立場ではあるが、それでも仄かに宿ったのは淡い恋心。
 実るとは、思っていない。
 それでも、かすかに残る柳の温もりは優しく。
 その優しさに、浸りたかった。
 成就するのか、分からなくても。
 宿った想いを、消す事は出来ない。
 次は、きっといい恋を。
 実っても、実らなくても。

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