目立つなあ、と、まず思った。長身細身の男が二人で向かい合って、ファミリーレストランの窓際の席に座っていた。見つけるつもりはなかったのだが見つけてしまい、見ていると、視線を感じた檸檬が私に気づいてべしゃりとガラス窓に張り付いてなにやら叫んでいる。蜜柑も気付いてくれたようだが、檸檬の首根っこを掴み席に戻すのに一生懸命だった。
二人は何やら言い合いをして、同じタイミングで外を歩く私を見て、手招きをした。来い、と言うことらしい。
特別な用事があるわけではないので、彼らの言う通りにファミレスに入り、彼らの席に近寄った。店員と目が合ったのでニコリと笑って目的の席を指さした。了解、という風に店員も笑って、私から視線を外す。

「こんなところで会うなんて珍しいですね。遅いお昼ご飯?」
「いや。ただ、時間を潰してるだけだ」
「おまえは帰るとこか?」
「はい。ついでに食料品の買い出しに行こうかと」

そうか、と二人は頷く。さっきからやけに息が合っているなと見ていると、二人はまた、同じタイミングで動き出す。ぽん、と、隣の椅子を手のひらで叩いた。声まで揃う。「まあ、座れよ」

「こっちのが日当たり良いぜ」
「いや、こっちの方が景色がいい」
「一緒だろうが。蜜柑てめえ適当なこと言うんじゃねえよ」
「檸檬。お前の隣じゃなまえがゆっくりできないだろう」

まずい流れだな、と思いながらそうっと後退りをすると両腕を二人に掴まれた。両方から引っ張られたりはしないが手が離れない。「なまえ」声が揃っている。とにかく座らせる、という強い意志を感じる。

「あ、でも、私、現金持ち歩いてなくて。ここカードだめでしたよね」
「今時そんなファミレスがあるわけないだろう」
「奢ってやるから座れっての。こっちきてメニュー見ろよ。檸檬様が好きなの食わせてやる」
「おっと、座るのはこっちだ」

このままではまずい。どんどん選びにくくなっている。元々軽くであってもどちらかなんて選べないが。なんとか逃げるなり場を収めるなりしなければならない。私は左右の座席の埋まり具合を確認した。檸檬の後ろ側には誰も座っていない。よし。

「檸檬」
「なんだ。どうした?」

くい、と檸檬に掴まれている方の腕を引くと、彼は敏感に私の意図を察知して席を立ってそばに来てくれた。蜜柑は不満そうだが、体を蜜柑の隣に滑らせる。檸檬もそのまま引いているので、本来ならば二人がけのソファに三人が詰まって座る形になった。

「これで勘弁してください」

私が頭を下げて、テーブルにごんと額をぶつけると、二人は私の頭の上で顔を見合せた。緊張が徐々にほぐれていく。最初に許してくれたのは蜜柑だった。「仕方ないな」檸檬もそれに続く。

「そうだな。許してやるか」
「ありがとうございます」

ほっとしたのもつかの間、その状態で檸檬、蜜柑が両腕にピタリとくっついてくる。正面にはメニューがある。「それで、どれを頼む?」「肉とか食ったらどうだよ」話は程なく、『どちらがなまえに奢るか』という議題に遷移すると、また同じように巡りはじめた。


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20210320甘やかし隊
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