はじめまして恋心02


リヒト捜査官の研究室の準備を手伝ってくれ。と言われ、私は「エ!!!?!」と大袈裟なくらい驚いてしまった。「え、嫌なの?」とは桜備大隊長の言葉で私は慌てて首を振った。とんでもない。今、どうやって仲良くなったものか考えていたところだ。
私は早速外に届いたという荷物の場所へと降りて行って、既に待っていたリヒト捜査官に声をかける。さっきから、りひとそうさかんを、とか、りひとそうさかんに、とかそんなことを考えるだけで心臓の挙動がおかしい。
すう、はあ、私によく告白をしにくるいろんな女の子がするように深呼吸をして。

「リヒト捜査官」
「ああ、あなたが荷運び手伝ってくれるっていう隊員っすね」

油断すると、目の前が真っ白になりそうになる。
私はそういう浮ついたのを拭い去る為に背筋を伸ばして敬礼する。

「なまえみょうじです。よろしくお願いします」

リヒトさん、は私の堅苦しい挨拶にへら、と笑って答えてくれた。

「僕はヴィクトル・リヒト。そうしたらこのあたりの荷物、全部僕の部屋に運ぶの手伝ってもらえますか?」
「はい! 任せて下さい」

あまりリヒトさんと話をしているとふわふわしてしまっていけない。まず仕事を片付けなければ。私は地面に置かれたよくわからない棚やら段ボールやらの山を可能な限り積み上げて行って、二つの山に分類してしまう。一つ小さいのが余ったが、それはリヒトさんが持ってくれれば問題ないだろう。バランスの良さそうな位置を探す。重いものもあるが、ほとんどは論文とか本とかなのだろうか?

「それにしても、大隊長も君みたいな女の子に一人で手伝いさせるなんて……、結構量あるし重いっすよ? 僕も手伝うけど、相当時間かかるかもしれないね」
「ん、ああ。大丈夫ですよ」
「……え?」

よいしょ、なんて小さく声を出しながら持ち上げて、ひょい、と肩に乗せる。そして更にもう一つの山も反対の肩に持ち上げて、「その小さいやつだけリヒトさんお願いします」と言って歩き出す。首が回らないからどんな表情をしていたのかわからないが、まあ、お気づきの通り私は失敗したわけだ。

「ええ……?」

これでは第一印象は怪力女以外のなにになれると言うのか。それに気付いたのは、荷物を運びこんで、マキさんに「もう終わったの?」と言われた時だ。「終わりました。あれくらいなら一気に持てますよ」「流石ですね」などといつも通りの会話をして……、ここで気付く。普通の女の子は、あの荷物の山を両肩に抱えてひょいひょい階段を上ったり、しないんじゃないか、と……。
私は頭を抱えながら次の日を迎えたわけだけれど、朝顔を合わせた時「あっ、なまえ隊員、昨日は助かりましたよ」と普通の人間に言うように言って貰えて救われる反面、あまりにも考えが読めなくて、やっぱり頭を抱えた。

「あ、いや、あの、ああ……、はい」
「えっ、どうしたの。なんでそんなに落ち込んでるの」

リヒトさんはわざわざそんな風に聞いてくれたけれど、まさか、昨日の私を見てどう思いましたか、などとは聞けず、「なんでもないです」と笑っておいた。仮にここで、本当に人間? などと聞かれたら立ち直れない自信があった。
今は朝からリヒトさんに挨拶できたことに感謝をしよう。ラートム。ありがとう太陽神様。明日もよろしくお願いします。


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20191208:らーとむ

 

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