サンドイッチも楽じゃない/ジョーカー、紅丸


浅草にある家に帰ると、リビングとキッチンの明かりが付いている。
今日は、どっちだろう。
考えながら玄関を開けると、男が二人、犬か猫のように狭い廊下を押し合いながら寄って来た。

「狭いだろ、帰れよ最強さん」
「お前が帰りゃいいだろうが」
「ここは俺ん家だよ」
「あ?」
「ああ?」

なるほど、今日はどっちもか。
一日の労働で疲れた体がもう一段階どっと重くなった。ちなみにここはジョーカーの家ではない。私の家だ。

「おい、なまえ」
「あッ、てめェ最強ふざけんな」
「風呂か飯か、それとも俺かどれにすんだ?」
「死ね」
「お前には聞いてねェよ」

カロリーが高すぎる。私は胃もたれしそうな胃を擦って慰めながら靴を脱ぐ。
洗面所へ行くにはこの二人を乗り越えていかなければいけない。大きく息を吐きながら「ただいま」と言った。私が言うと、掴み合いながらも新門紅丸とジョーカーは「「おかえり」」と返してくれた。が、私に触れようと伸ばした手をお互いに叩き合っており退いてくれる気配はない。
しょうがないのでやや集中力を消費して一瞬の隙をつき、二人の間をするりと通り抜けた。



風呂に入ろうとすると手伝うとか手伝わないとかで揉め始めて(揉めている間に入って出た)、出てきたら出て来たでどちらが髪を乾かすかでドライヤーを奪い合い(一度壊されたことがあるので壊される前に取り上げた)、ご飯を食べようとすると両サイドにこれでもかと言うくらいに寄ってやはり睨み合っている。大変に食べ辛いのだけれど、まあ食べられないことはないので放ってある。
食べ終わって食器を片付け、歯を磨いてさっさと寝ようと寝室へ行くと、当然のように待ち構えている。
……、ここで私はちらりと時間を確認する。日付は変わって、一時も過ぎていた。終電で帰って来た体に、抵抗する気力は残されていない。そっと横を通り過ぎて、ベッドにもぐりこむ。明日になれば、あるいは、休みの日ならもう少し話を聞いたり聞いてもらったりしたいところだけれど、今すぐ寝ても明日の始発に乗るためには四時間程度しか眠れないのである。
一秒でも早く寝たい、これが私の嘘偽りない本心だ。

「疲れたろ、マッサージしてやろうか?」
「……寝てていいなら」
「オイ待て、こんな怪しい奴に体預けるってのか?」
「チッ、一々難癖付けてきやがって……、少しは静かにできねェのか?」
「あ? うるせェのはてめえだろうが」
「……声は大丈夫だけど、眩しいのしんどいから暗くしていい……? 好きなだけ喧嘩してていいから」

言うと、今度は私の右側で寝るのはどちらかという喧嘩が始まった。なんでも、私は熟睡すると右側に寝がえりを打つので、右側にいるとおいしいんだそうだ。めちゃくちゃどうでもいい。私は構わず枕元にあるリモコンで照明の暗さを調整して枕を抱きしめて目を閉じる。

「おやすみ……」
「おい、なまえ、こっち。こっちにしろ」
「お前はデカすぎて抱えにくいだろ、引っ込んでろ」
「あ? そんなに変わらねえだろうがチビ」
「ああ?」

いよいよ私の意識が遠く眠りに近付いていくとこれ以上揉めていても無意味と思ったのか、あっさりと左右を決定してベッドの中に潜り込んでくる。ベッドガードがきしりと音を立てる。頭のあたりに紅丸の手が置かれて、ジョーカーには腹を規則的に叩かれている。
いや……。
普通に暑いし……。
なにより……。

「狭い……!」

耐えられなくなってつい、二人を投げ飛ばしてしまった。
投げ飛ばしたはずなのに、朝起きると、元通りに両サイドに二人は居て、私は気を使って二人を起こさないように部屋を出ることになった。二人とも朝があまり強くないのか全然起きないから放っておいたが、一応二人分用意した朝食は、どうしただろうか。
無言で二人で食べていたら面白いな、などと思いながら、本日も仕事に励むのであった。


--------------
20191113:これはカチコミサンドと言ったが……、ただの私の性癖を詰め込んだ話なので……、実は黒野さんもリヒトくんも入り込む余地がある……。続き書かせてもらっても大丈夫ですか? 正気失いすぎ? 他に男が居る時は尽くしてみせるくせにたまーーーに二人になれたらどろどろに甘える群れのボス猫みたいな皆を読みたいと思わないか……? 私は読みたいし書きたいです……。

 

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -