火縄反撃編02


別段話すことはない、のだけれども、私の場合は少し普通のルートからは外れている。訓練生になるところまでは同じだった。学校にも通ったのだが、私が学校にいたのは半年ほどで、いなかった期間は、私の戦闘術の師匠に連れ回されていた。

「一人では限界がある」

と、師匠はよく言ったものだが、彼が求めていたものというのは、自分の力が最大限、あるいはそれ以上に発揮できる相棒の存在である。私は師匠に半ば誘拐されるように連れ出され、師匠の求めるレベルに至ることができたのかどうかはわからない。師匠は、私と師匠、二人、という単位を無限にしたかったようだが、志半ばで病死した。

「その後はまあ、訓練学校に戻って、第一に配属されてって感じで」
「……聞いたような話ばかりだったな」
「いや本当に、改まってする話なんかないんだって」

火縄は残念そうに言った。残念がられても困る。空になったタピオカの入った飲み物の容器は火縄が回収した。「ありがとう」「いいや」途端に懐かしい気持ちになったのは、こういうことが一度や二度ではなかったからだろう。

「はは」
「なんだ、突然笑い出して」
「いや、懐かしいなと」
「なにがだ」
「いやいや」

わからないようなので黙っておく。つまりは、火縄にとっては日常的な出来事なのだろう。なんら特別なことではないのだ。改めていいやつだなと思っていると、私の行動があまりに不可解だったからか銃を突き付けられた。咄嗟に両手をあげる。

「なにが」
「銃を出すな軽率に」

カタギの皆さんがみたらびっくりするでしょうが。火縄は銃まで出したくせに、私が笑った理由を聞き出すのを諦めて溜息を吐く。

「お前には、きっと一発も当たらないだろうな」
「流石にこれだけ至近距離だとなあ」

それに、どれだけ周りが実力を買ってくれたとしても師匠の言う通り「一人では限界がある」のである。


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20230405

 

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