手のひらから愛を/ジョーカー


俺がなまえにするように、なまえが俺の体を触ることが時々ある。腰だったり足だったり、さり、と、なまえの指が際どく腰を摩る。
今日は朝食を作ってやっている時に、背後からいきなり触られた。なまえは反対の手に持ったカップに口をつけながら真剣に俺の体に触れている。

「なにセクハラしてんだ」

言えば、ぱ、と顔を上げて、まあそんなつもりではなかったのだろう、目を見開いて驚いていた。この程度でセクハラになるなら、時々変な雰囲気にならない程度に胸や尻まで触る俺はそれ以上ということになる。

「えっ、じゃあジョーカーが私にいつもするのは?」
「愛情表現」
「……??」

なまえは、「ふうん」と言いながら、俺の腰に手を当てたまま動かない。同じに見えるのに何が違うのだろうと考えている顔だ。体を捻るとなまえはしっかりと俺の動きに合わせて動き、邪魔にはならない。
ただ今日は、どうにも俺のこと(体のこと?)が気にかかるらしく、する、となまえの手が下に下がってとうとう俺の尻を掴んだ。オイ。襲われてェのかこの野郎。

「……愛情表現?」
「セクハラだっつうの」
「????」

あまり無遠慮に触られるとやり返したくなってくるので嫌そうな顔を作ってやればなまえはぱっと手を離して「ごめんなさい」と言った。「別に怒っちゃいねえし、嫌でもねェよ」「そう……?」首を傾げて考えている。なまえにとっては難解なのだろう。感情を押し殺して生きてきて、はじめて出会うもの全てが日々なまえの糧になっていくのだ。
俺の愛をも手ずから食って、日々を生きている。気づいているのかどうかは、わからないが。

「愛情表現ならもっとわかりやすいやつにしてくれ」
「わかりやすい……??」

ベーコンエッグを渡してやると、手を合わせてからもくもくと食べている。わかりやすい、そもそも愛とは。セクハラってなんだっけ。なまえはそんなことを考えているのだろう。顔に書いてある。
考えていることは書いてあるのに、なまえは簡単に俺の予想を飛び越えていく。

「あ!」

ぱっと顔を上げて俺を見た。

「私、ジョーカーが大好きですよ」
「……」

突然告白された。いや。知っている。好かれてはいる。好いてもいる。

「わかりやすい愛情表現?」
「いや、悪かった。お前はいつでも分かりやすいよ」

邪でないから眩しすぎるが、なるほどなまえからの愛も確かにいつも受け取っている。「知ってるさ。そんなこと」そう返事をすると、なまえは満足そうに微笑んだ。

「なんだか最近、ジョーカーに触ってもらえると嬉しいから。ありがとうございます」

その発想も行動も犬猫のような恩返しだが、俺はどうしようもなくなって顔を覆った。


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20191106:いちゃつかせたい

 

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