休日まであと二日/大黒


本日分の家事と、なんなら明日の準備まで完了したので携帯ゲームに興じていたら、大黒さんが私とソファとの間に入り込んできた。
そして彼は、私と、私が肘置きに使っていたアザラシのぬいぐるみごと私を後ろから抱きしめて、盛大にため息を着くのであった。疲れているらしい。

「……なにか飲みます?」
「いい。今飲むと止まらなくなりそうだ」
「んん……甘いものとか?」
「気を使わなくていいからもう少しちゃんと構ってくれ」

それは気を使えと言う意味ではないのか。私は思うが、文句を言う程のことでもないのでゲーム機の電源を落としてその辺に置き、両腕を上げて肩にある大黒さんの頭を撫でた。

「大黒さん、早く寝た方がいいんじゃないですか? 明日も早いですよね?」
「……今日は酷く邪険にするんだな」
「いえ、だって昨日もその前も帰ってくるの遅かったですし、せっかくちょっと早く家にいるんだからベッドでちゃんと寝た方がいいんじゃないかなと」
「君の言うことは正しい」

大黒さんはそうは言うものの私の腹の前で固定されていた両手を解き、ぬいぐるみを放り投げて、薄いシャツの下に手を滑り込ませた。
大黒さんの手のひらはそのまま上に上がってきて、私の胸を柔らかい下着の上から鷲掴む。

「大丈夫ですか?」
「なにがだ」
「いや、そのままの意味です。大丈夫ですか?」
「大丈夫そうに見えるか?」

いつもならばもっとスマートで紳士的だ。それらをひとつも発揮できないくらいに疲れているようなので、単純に心配だった。
ゆるゆると胸を揉む手が気にならない訳では無いが、それほど性的な動きでもない。手触りのいいぬいぐるみでも潰しているような感覚で触っているのだと思う。
しばらくすると、やはりそこから先をするつもりはないのか、したら明日が辛いとわかっているからか、手がゆっくりと離れていった。「なまえ」

「はい」
「こっちを向いてくれ」

はい、と振り返ると体をまだ捻っている途中なのに噛み付くようなキスをされた。これは流石にぬいぐるみにするような軽いものではない。
お互いの唾液で唇がつやつやと濡れてしまった頃、「ふ、ぅ」やっとの思いで息を吸い、額をぶつけて止まってもらう。

「大黒さん、もう、寝た方がいいですって」
「……まだ甘やかされていたいんだが?」
「それはわかるんですけど」

私は頭を左右に振った、邪険にしている訳では無い。

「私の方も、ちゃんと構って欲しいって、言ってしまいそうなので」

だから、これ以上は。と大黒さんと私の顔の間に自分の手のひらを捩じ込んだ。私の方も、あまり家にいない大黒さんについて、何も思わないわけじゃないのだから。
大黒さんの反応を見る。
ばし、と自分の頭を叩いて、大人しく寝室へと歩いていった。途中、投げたぬいぐるみを踏んでバランスを崩していたが、転ぶことは無かった。

「……明後日。覚悟しておくように」

二人で行かないのは正解だ。多分お互いに眠れないだろう。
しばらくして、大黒さんが眠ったら、私もベッドに入ろうと思う。
落ち着くまでゲームでもしていよう、とゲーム機の電源をつけたが、結局、明け方まで遊んでしまった。


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20200820部長の甘い夢書きたかった…これはこのまま明後日編を書いたらすけべですね…

 

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