性質について/ジョーカー


ソファで本を読んでいると、上からぱさりと長い黒髪がかかった。誘導されるままに上を向く。

「ただいま」
「……おかえりなさい」

あ、疲れている。
ジョーカーはどっかりと隣に座り、はー、と大きく息を吐き出した。「お茶とか持ってくる?」「頼む」「何か食べる?」「なんかあんのか?」「さっき作った炒飯がある」「食う」うん、と頷いて私はコップに麦茶を注いで、軽く炒飯を温めた。
ジョーカーが飲み干すのを見ていて、ふと、なんだか髪まで乱れていることに気が付いた。どこかで、戦闘でもあったのだろうか。
手ぐしでさらりと梳いてみると、やや傷んでしまっている。

「……」

今なら反撃もないだろうと櫛を持ってきて、そっと髪を梳かしていく。さらさらと小さく音がしている気がする。私に隠れて、なにか特別な手入れでもしているのかもしれない。
ジョーカーはしばらく炒飯を食べながらされるがままになっていたが、食べ終わるとなまえの行動にツッコミを入れる元気が出てきたらしく、「楽しいか?」と聞いてきた。

「意外と楽しいですよ」
「ホントかよ」
「うん」
「試してやる。場所替われ」
「え、」

言われるがまま場所を替わると、なにやらごそごそと取り出してきて、てきぱきと髪を数ブロックに別け、ピンでとめたり癖をつけたりしはじめた気配がする。
こ、これは。

「……」

変なところで凝り性だ……。

「できたぜ見てみろ」

数十分ほど時間をかけて、このまま夜会にでも出られそうな髪型にしてくれた。鏡に映るジョーカーは得意気だ。しかしこの髪型。今の服には絶望的に似合っていない。

「……楽しかったですか」
「意外とな」
「器用ですねえ……」
「だろ」

今日は一日本でも読んで過ごそうかと思っていたが、外に出なければもったいない気がしてくる。炒飯を作ったことにより食料も減ったし……。

「よし、折角だから買い物行ってきます」
「オイ待て。俺が行く」

立ち上がろうとした私の肩を押さえてもう一度座らせる。何故止められたのだろう。ああ、ひょっとして今外に出るのはまずいのだろうか。ならばそう言ってくれれば買い物に行く必要もまだないし、無理矢理に出ていく気もない。
しかし、ジョーカーは俺が行く、と言った。やや必死な語調である。

「欲しいもの分かるんです?」
「わかるよ。確かに日毎に上手くなってるがもう三日間ずっと炒飯だぞ。いい加減にしろ」

今日はキムチを入れてみるつもりだったのに。

「え、ダメ……?」
「ったく、変なところで凝り性な奴だなァ」

なるほど、と私はとりあえず冷静になって、今日は炒飯修行を取りやめることとした。この間止められた餃子でも再会しようか……、

「餃子もなしな」

……。



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20191102:こういう夢書くのもほんと楽しいから困っちまいますよね…。

 

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