感情の話/カリム


第一特殊消防隊でも仕事をするようになったわけだが、いつも、どうにも静かな気がして理由を考える。考えると、すぐに理由がわかる。「レッカか」ぽつ、と呟いてしまったのがカリムに聞こえていたらしく「レッカがどうかしましたか」と聞かれた。

「どうした、ってこともないけど。教会が今日も静かだと思って」
「……そうですね」

レッカが伝導者の一味であることは、私も同じく見抜けなかった。カリムやフォイェン、バーンズ大隊長になんと言うべきか、いつもわからない。大事な時にいなかった人間が言えることなど何も無いと、そういうことなのかもしれない。ただ、ひとつ言えることがあるとしたら。

「……寂しくなったね」
「レッカのこと、そんな風に言っていいんですか」
「私は仲良し三人組が仲良くしてるのを見るのは、好きだったよ」

カリムは黙って、私の腕を掴むとそのまま引っ張って自分の部屋に歩いていった。振りほどくこともぶん投げることもできたが、そんなことをする雰囲気でもなかったのである。
カリムは耐えるように唇を引き結んで、その感情が零れないように体全部に力を入れていた。
部屋に入るなり閉じた扉に私を押し付けて抱きしめた。これは違う。カリムは結構打算的なところがある。だから、私に意識させるのが目的なら、こんなに雑なことはしない。

「寂しいですか」
「そうだね」
「レッカはクソ野郎でしたけど」
「それでも、いなくなるのは寂しいことだ」

少しでも楽になればと背中を叩く。ぽんぽんと規則的に叩いているとカリムが顔を押し付けている肩の当たりがじわりと熱くなった。こんな風に素直に思ったことが言えるのは、私が第一の人間ではないからだ。第一で、立場がある人間になると、口に出せない本音もある。
死んでしまっては、もう、わかりあうこともできない。

「このあと、フォイェンも誘ってご飯でも食べに行こう」
「……はい。その後俺と二人で二人きりになって別の他の店に行きましょう」
「夜通し三人で遊ぶに決まってるでしょうが」
「……」

人生ゲームにトランプに、どうでもいいようなことをずっと話していたい。どんなことでも話せばいい。なんと言っても私は、こんなに自由な立場なのだから。

「ありがとうございます、大好きです」

どさくさに紛れてキスをしようとするのでそれは止めておいた。「……させてくれたら、百倍は元気に調子よくなるんですけどね」と不貞腐れているが通すべき筋というものがある。

「……」

ただ、口でカリムに勝てる気がしなくて、無言で頭を撫でておいた。話さない私を不満そうに見ていたけれど、大丈夫だ。カリムなら、私より私らしく、この行動を解釈してくれるだろう。


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20200801アンケしたら一位だったのでカリム夢

 

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