爆弾を投下/ジョーカー


「ほら、イイコちゃんにお土産だぜ」
「え、ありがとうございます」

やや嬉しそうに俺から紙袋を受け取り、しかしもらったは良いがどうしたものかと、俺の顔と紙袋とを交互に見た。
そして、その内ハッと、少し前に俺から貰った紙袋からカエルが飛び出してきたことを思い出して、伺うように俺を見上げた。
感情なんて本当にあるのかって顔を良くしていたのに、今では俺を疑えるほど立派になった。そして俺はそうして疑心暗鬼になりながらも、そうなってはいけないと葛藤し「ありがとうございます」ともう一度繰り返したなまえを見て楽しんでいる。
それでも今すぐ開けずにしばらく紙袋を眺めていて、俺は面白くて堪らない。
別になまえは、俺が開けていいと言うのを待っている訳でも、中身がみたくない訳でもないはずなのだけれど。
不必要に慎重に、紙袋を鼻先に持っていったあたりで耐えられなくなった。
ぶは。

「っ、く、ど、動物かお前は」
「え、え? な、なんですか?」
「いや、わら、笑って悪かった。続けてくれ」
「はあ……」

尚も腹を抱えてソファで蹲る俺を、なまえは不思議そうに一瞥して、ようやく袋をあけて手を突っ込む。中にはさらに白い箱が入っている。
なまえはまた、その箱を持ってどうしたものかと思案する。ひっくり返しはしないけれど、箱の裏面を覗き込んだところでまた耐えられなくなった。

「……まだ、開けてないんですが」
「ああ、ふ、悪い悪い。どうぞご自由に。そりゃもうお前にやったもんだ」
「……」

意を決して、と言う風に箱を開ける。
ナマモノだから早くして欲しかったので、まあよかった。別に何も飛び出さない。
なまえは「あ、」と小さく声を漏らす。
固まるなまえの表情を正面から確認するために、わざわざ前に回って、テーブルに頬杖をつき、手のひらに顔を乗っけてなまえを見る。
なまえはぽかんとした表情のまま言う。

「ケーキだ」
「おお、ケーキだな。驚いたか」
「なんで?」
「なんでだと思う?」
「え、わからない。ジョーカーが食べたかったからじゃなくて?」
「二十点だなオイ……」

仕方がない。ここで、拾った雑誌を熱心に眺めていたこいつの為だなんて、こいつが気付くとは思っちゃいない。二十点やったのは、ゼロじゃさすがに落ち込むかと、俺なりのお情けだ。
二割の情けに、なまえは、「じゃあまあ、正解だ……?」などと前向きなことを言うのでまた笑えてしまう。
それにしても。

「食おうぜ」
「え、なんかこう、ないんですか、もっとこう、なんて言うかわからないけど」
「あ? なんかいるか? ああ、愛の言葉とか?」
「ん? 違う」
「……そうかよ」

五点とかにしとくんだったぜ。

「ええーっと、そうだ、勿体なくない? もうちょっと眺めてていい?」
「……」

俺の不服そうな顔を、さっさとケーキが食いたいせいだと解釈したなまえは、「ああ!」と興奮気味に手を打って、リヒトに貰ったカメラを持ってきた。そして、なんの捻りもない上からの写真を一枚。

「よし」

と満足そうに笑った。
喜んでもらえたみたいで何よりだ。


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20191102:こういう夢無限に書きたくな…る…

 

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