1月:元旦


起きたら昼だった、という事がある。
朝早起きして日の出を見て、初詣というイベントもある、と得意気に話をしたのは記憶に新しい。52は「日の出」とそわりと反応して楽しみにしていた。
例え大晦日まで全力で残業をしたとしても起きられる自信はあった。あったのだ。しかし結果はと言えば無様にも寝坊という有様であった。
元旦から目覚まし時計を二度見し、部屋から飛び出るように出る。52はどこにいるだろう。「あっ」声は私のものでは無い。扉のすぐ横の壁に背を預けて膝を抱える姿は、どう見ても起きてくるのを待っていました、という風で。

「……52」
「おはよう、なまえ」
「おはよう……」

そして「ごめんね……」と私は52の前で両膝と両手を地面についてがっつりと項垂れた。はあ。と大きなため息を吐いて改めて時間を確認する。十二時半。初詣ならなんとかなるが初日の出はとっくに上がってしまっている。「ごめん」思わずもう一度謝って廊下にそのまま寝転がった。駄目な大人だ。ここまで頑張っていたがとうとうボロが出始めた。

「なまえ」
「ん?」
「寝るならベッドに行った方がいいんじゃないか」
「もう寝ないよ……」
「起きてて大丈夫なのか? どこか痛いとかじゃないんだな?」

52は私を心配して部屋の外にいたらしい。余計に申し訳なくなってくる。「ただの寝坊です……」と包み隠さず白状すると、52は素直にほっとしていた。悪い予感が外れていてよかった、というところか。私は起き上がって、顔を洗って着替えてきた。そして改めて、約束を思い切り寝坊された52に謝る。

「本当にごめんね。起きて待っててくれたのに」
「いいんだ。疲れてたんだろ。昨日遅くまで仕事だったし、最近ほとんど休みなかったし、俺だって起きたのは日が登ってからだったんだ。だから、」

だからいい、と52は言った。「病気とかじゃなくて良かった」真剣に胸を撫で下ろしながら「起きて、よかった」と。私は台所に走っていっておせちを広げて雑煮を作った。52のには餅をふたつ入れた。

「食べよう!」
「ん」
「あと欲しいものは!?」
「なまえがこの家にいるならそれでいい」

本当は日の出や初詣を楽しみにしていただろうに、優しくそんなことを言う52にいつか必ず報いなければならない。元旦はこんなんだったが明日から頑張るぞと拳を握った。

「なまえ、」
「なに? お願いごと? どんとこい」
「この汁物美味いな」
「ええ…ありがとう…」

私頑張るね、と泣きそうになっていると、52は「俺も」と頷いた。今年の目標は寝坊をしないに決定した。


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20200713:そんな夢主をみるのははじめてだったからそれはそれでうれしかったとおもいます。

 

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