vsカリム_過去編03


二日連続で告白すると、流石に流石のなまえさんでも若干困って首を横に振った。俺が何度も見ることになる表情で、そこからはもう半分くらいは自棄で、あとは、意地と、それからただの衝動だった。やめようと思ったこともあるけれど、見かけてしまうと、顔を見てしまうとダメだった。諦めることなんてできるはずがない。

「どうしようもなく、好きだ……」

食堂でそう項垂れる日も相変わらずあって、フォイェンは笑っているし、レッカは拳を握りしめて「その意気だ! いいぞカリム! 今日も! 当たって砕けろ!」などと言う。今日も当たって砕けろってなんだ。ちょっとくらい元気づけるようなことを言ったらどうなんだ。とは思うものの、この熱血漢の熱血振りを見ているだけでやや軽くなっている。今日は。今日も。
もう告白し始めて一月が経過した。最近ではすっかりなまえさんは俺の顔を見るとまず、(どっちだ?)という顔をする。告白か業務の話か。伺うような目にもどきりとしてしまうから俺は末期患者だ。

「なまえさんも頑張りますねえ」
「どういう意味だ?」
「振り続けるのだってパワーが必要って話」
「パワーにしても持久力にしてもなあ……」
「でもなまえさんも人間ですから。根は面倒くさがりでできれば楽をしたい人ですよ。案外、カリムがしつこく迫ってればそのうちコロッと来てくれるかも」
「まあ、俺にはそれしかねえからな」

頑張って、といつものように応援された。レッカは食堂で大声を出しているものだから大隊長に「うるさいぞ」と怒られていた。ラートム。



二か月が経過してくると、なまえさんは顔を見るなり「うわ、」と面倒な奴に掴まったと言う顔を隠しもしない。
今日もその嫌な顔を見に行こうとなまえさんを探していると、なまえさんとフォイェンの話し声が聞こえてぴたりと止まる。何やらフォイェンはなまえさんに交渉を持ちかけているようだった。

「週に二度? 多くない? 月に一度じゃ駄目?」
「せめて週に一回……、時間が取れなければ二時間とか三時間とかでいいんです。どうですか。たったそれだけでカリムは毎日告白しに来なくなるし、もしかしてチャンスがあるのでは、と貴女を狙っている隊員も一掃できます」

俺の話か? 壁に寄って息をひそめる。フォイェンは何の話をしている?

「一掃て……、いやでも、そうか……、それは」

週に一度。ううん。でも恋人にならなきゃなんないのか。そこは譲れませんね。ああそう。そうですよ。どうですか。カリムを貴女の恋人にしてみては。……、なんて友達甲斐のあるやつなんだ。俺を売り込んでくれているらしい。じり、と壁によってさらに耳をすませる。

「いいかもしれない」

その条件なら、ともちろんそういう話であることは理解しているが、どくどくと全身を巡る血液の速度が上がる。熱い。妥協に妥協を重ねた形だ。最初は良くても後でしんどいかもしれない。構うものか。俺にとっては千載一遇のチャンスだ。どれだけしんどくても食らいついて、俺を選んでもらう。
ここしかねえ。

「なまえさん」

ぱっと部屋に入ってそう呼ぶ。なまえさんはじっと俺を見上げている。さっきの話のことを考えているのだろう。それはつまり、俺の告白への返事を改めて考えてくれているということになる。息を吸い込む。声が震えないようにめいっぱい吸い込むが、出てきた声は想像より小さかった。

「大好きです。今日こそ俺と、付き合って下さい」

何度口にしても胸がぎゅうぎゅう音を立てる不思議な言葉だった。使わなかった酸素をゆっくり吐き出しながら待つ。
なまえさんは熟考の後口を開く。「わかった」

「条件付きでならいい」

フォイェンには感謝してもしきれない。一生飯を奢ってやってもいい。


----------------
20200218(sukisukisuki)

 

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -