vsカリム編07


ラーメンから立ち上る湯気の中で桜備大隊長は言った。

「実際、どう思ってるんだ? 二人の事」
「あー」
「あっ!? ひょっとしてこれ、セクハラになるか……?」
「いや、聞いてください」

人に話すと一ずつ整理されるのは本当で、先日リヒトと話した内容を桜備大隊長にもぽつぽつと喋った。

「私が悪いんですかね」

違ったのは、甘えるようなこの言葉だけだ。
火縄へのプロポーズが失敗したのも、カリムが完全に私を拗らせているのも。私が悪いのだろうか。

「いや、すいません。忘れて下さい」

それを桜備大隊長に聞いても仕方がないだろう。過去のことはどうあったって変わらない。私はラーメンを啜りながら薄っすらと二人のことを考える。私が、悪いのか。私はどうするべきなのか。いいや、できることなど一つしかない。

「今となっては、悩んであげることしかできないなと」

思っている。悩んであげることしかできない。悩むなんて柄でもないけど。いや、柄でないからこそ、そうしなければならないのかもしれない。はあ。先が思いやられる。カロリーがどれだけあっても足らない。桜備大隊長と同じタイミングで替え玉を貰った。

「そうだなあ。何ていうのかな、こういう時、誰が悪いとか悪くないとか、そういうことを考えてもしかたないさ。俺はよくタイミングが悪かったと思うことにしてるぞ」
「ああ。タイミング」

……タイミングが悪かった。めぐり合わせがよくなかった。あのプロポーズはあの日あの時ではどうあっても成功しなかったし、カリムは私が何をしていてもああだった。そう言って貰えるとやや楽になる。ふう、とスープを半分飲み干しながら息を吐く。

「で? どっちが優勢なんだ?」
「そんなのあったら決まってませんか。ちなみに桜備大隊長だったらどうします」
「えっ、俺? 俺か……、俺ならそうだな……。火縄だったらあの料理が毎日食べられるだろ」
「ああ、それは魅力ではありますね」
「けどカリム中隊長も真っすぐで思いっきりぶつかって来る感じがかわいいよな」
「わかりやすくていいですね。やめろって言ったらやめてくれるし」
「悩むなあ〜〜」
「本当に。なんで揃いも揃って私なんかがいいんだか」
「聞いてみたらどうだ?」
「余計悩むことになる気がするので聞きたくないです」
「だっはっはっは!」

私もつられて笑っていることに気が付いて、改めてありがたいな、と桜備大隊長に感謝した。それから、今日まで桜備大隊長からこの件について何か言われることはなかったのだけれど、なるほどこれは。

「桜備大隊長、実は興味深々ですね……」
「そりゃそうだろ。隊員の一生がかかった問題だからな」
「一生かかってますよねこれやっぱ。自分、弱音いいですか」
「よしこい!」
「めちゃくちゃ面倒くさい。本気で国外逃亡を考えるレベル」
「ははははは! たぶんあの二人はどこに逃げても追っかけて来るぞ!」
「はあああ……、チャーハン食べていいですか」
「よしよし、大盛りでいけ!」

こうなった以上、決意表明は必要だ。
私は更に餃子まで食べて、とりあえず近いところから、武久火縄とちゃんと話をすることにした。殴ってしまったことも、まだ謝っていない。


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20200216

 

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