vsカリム_過去編01


その人のことは入隊前から知っていた。バーンズ大隊長直属の部下であるなまえさんはどこの隊にも所属しておらず。それ故に、シスターの仕事も(よく喧嘩をするせいで資格を剥奪されていたが)、消防官の仕事も、機関員の仕事もできて、いつ見ても忙しくしていた。
そのはずなのに、思い出す姿はのらりくらりと一人で大聖堂を歩き回る姿だ。まず自己紹介が「なまえみょうじ。喧嘩なら買います」だったので(バーンズ大隊長に頭を殴られていた)、とんでもない人なんじゃないかと思っていたが、実際とんでもない人だった。
俺と、レッカ、フォイェンはまず新人時代、祈りの時間中にこそこそ話をしていて、首根っこを掴まれて外に叩き出された。訓練場まで引き摺られ、なまえさんはにこりと笑う。

「そんなに退屈なら私と遊ぼうか」

と、明らかに怒っていた。自分だってこっそり寝てたりするくせに。そんなことは言えなかったが、この日、新人の俺達は(今でも勝つことはできない)ボッコボコにへこまされて、なまえさんには三人がかりで傷一つつけられなかった。
とんでもないのはわかっていたがここまでとは。
女のくせになんて戦闘能力だ。
しかも多分俺たちは、なまえさんの本気の戦いを見たことがない。
後にバーンズ大隊長は「私もあれとは戦いたくない」と笑っていた。
さらにこれは聞いた話だが、その日、先導として祈りの言葉を捧げていたシスターは、当時の俺達と同じく新人で、かなり緊張していたのだと言う。なまえさんはそれを知っていて、俺達が無神経に煩くした為引き摺り出したわけだ。実際ぶん殴られた後に「寝るのはいいけどうるさくされると集中途切れるから」「寝るのはいいけど」となまえさんは念を押していた。「ばれないように寝て欲しい」とも。「いやそれにしても」

「見込みあるなあ。仲良し三人組」

からりとした笑顔に、目を奪われたのをよく覚えている。
しばらくなまえさんは俺達のことを仲良し三人組、と呼んだが、俺がその三人組から、ただのカリム・フラムとして見て欲しいと思うのに、そんなに時間はかからなかった。


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20200217(予感がした)

 

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