20200214/女子組(B)


「なまえちーん、ちょこれーとちょーだい」
「……」
「あッ、こら、なんで逃げんだよ、待ちやがれ! ものどもであえ! ターゲットがにげたぞーい!」

アローさんに狙撃されて、あえなく沈んだ。鬼ごっこは五分と持たず、床に転がされた私に「私から逃げられるわけないじゃん」とインカちゃんは笑っていた。そうか。そういうことかと納得して。いや、なんで私以外の女子全部結託してるんだ?

「お嬢様、材料の準備できましたよー」
「だって、なまえ。ほら、立って」
「材料?」
「世間様じゃあバレンタインっしょ? まあそれはどうでもいいんだけどあちしらもほら、チョコレート食べたいなって? 思って? だからなまえちゃん作ってちょ?」
「材料があるなら、別に買って来たら」
「手作りがいいんだが」
「なんて?」
「手作りがいい」

四人に囲まれてじりじりと詰め寄られる。わかったわかった。作る作りますよ。はいはいはいはい。チョコレート菓子作ればいいわけだね。オッケーオッケー。

「で、どういうのが食べたいの?」
「手の込んだやつ」
「甘いのがいい」
「美味しればなんでも」
「食えればいい」
「やる気あるのかないのかどっちそれ……」

作るものはなんでもいいらしい。リツが用意したと言う材料次第で決めるかなあとキッチンを覗くと、とんでもない量のチョコレートが積まれていた。なに作るんだ? 石造? とか言ったら、いいね石造! と言い出しそうなのが四人いるなと踏みとどまった。触らぬ神になんとやらだ。私はじっと黙って袖を捲った。



せっせとオーブンレンジの余熱をしたり、クルミを煎ったりしているわけだが、全くもって進まない。と言うのも、四人が四人かわるがわるに様子を見に来たり、足元で遊んだり、脇腹をつついてきたりと進ませる気がないからだ。
なんやかんや言って追い返すのだが、待つのも面倒になってきたらしく全員がキッチンに雪崩れ込んで来た。

「なまえ、まだできないの?」
「手伝いましょうか、三秒くらい」
「私も炎を出すくらいはできるが」
「んひひひ、なあ、これ舐めてもいーい?」

仕方ない。昨日通販した秘蔵のDVDをさし出して大人しくしておいてもらおう。

「向こうで映画でも観てて。お願いだから」

はあい、と四人はわらわらとキッチンから出て行った。映画に飽きて戻ってくる前に仕上げるだけ仕上げて、逃げよう。


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20200206:その思考も読まれて手足掴まれてこのあと皆で映画観る。

 

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