口止め料800円/カリム


夜まで熱心に祈っているなまえの背を、しばらく眺めていた。

(今日も可憐だ……)

自分より早く第一特殊消防隊に所属していた憧れの先輩の後ろ姿を、もう何年も見続けてきた。しかし、彼女、なまえに憧れる者は多すぎて、現状ではカリムもまたその大勢のうちの一人に過ぎなかった。特別目をかけてもらえている訳では無いし、特別仲が良い訳では無い。最近入った環の方が余程なまえに可愛がられている。(なまえさん的にはタマキのあのタマキな感じが気に入っていてツボであるらしい)それを羨ましいと思っている多くの隊員の一人でもある。
祈りの邪魔をするわけにもいかない、たった二人で教会にいられただけでも貴重な時間だったと(レッカやフォイェンが居たら背中を足で蹴り飛ばされるだろうが)立ち去ろうとした。
その時、

「!」

完璧な祈りの後ろ姿が突然崩れる。かく、と一瞬頭が落ちた。

「……やばい、寝てた……、もう部屋に戻……」

なまえが振り向くと、目を見開いてこちらを見る、カリム・フラムの姿があった。なまえはしまったという顔をして動きを止める。二人ともがお互いを見つめあったままじっと黙っている。「あー」先に声を出したのはなまえだ。

「……カリム、見てた?」
「見て、いや、見てま……」

せん、と言おうか迷うが、それではいつもの、優秀な後輩で済まされてしまいそうな気がして現状への精一杯の抵抗として言う。

「した」
「うわあ……、ううん……、あー……、よし、ラーメンでも食べに行こう」
「えっ、この時間の今からですか?」
「私の行きつけの店で奢るから見なかったことにしてね」
「そ、」

そんなことして貰わなくたって、秘密にしますよ、と言ってしまいそうになって慌てて口を塞ぐ。ラーメン。ラーメンか。いささか色気に欠けるが、二人きりだ。

「行きます」
「よし! そうと決まれば誰にも見つからないうちに行こう行こう」
「はい」

カリムとなまえはこっそり教会を抜け出して、夜の東京皇国に繰り出した。いつも通りのなまえの言葉を聴きながら、カリムは心の中で拳を握って天を仰ぎ、太陽神に魂から感謝していた。

(ラッッッキーーーーーーッッ!!!!!)


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20200131:ラーメン食べたい↓におまけ

「チャーハンと餃子も注文して頼んでもいいですか?」
「いいよ。私もチャーハン食べようかなあ」
「……俺のちょっと食いますか?」
「ホント!? 食います!」
「餃子もどうぞ」
「ええ? カリムやっさし。ありがとありがと」
「ちなみに替え玉とか」
「めっちゃ食べるねえ」
「いえその、」
「うん?」
「なまえさんに連れてきてもらえることって、まずないので、ちょっとでも時間引き伸ばして伸ばしたくて」
「ええ? そんなんしなくてもいつでも連れてくよ。二人いるとシェアできてお得だってわかったし」
「!!!」

(魂が作るガッツポーズ(二度目))

 

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