二つ目の飴玉はやや甘い/リヒト


なまえって、いつも飴持ってるよね。とは、友達の言葉だった。そうだろうか。そうかもしれない。無くなる前にご褒美と称してくれる人がいるものだから。

「はい、あーん」
「……いや、自分で食べます」
「遠慮しないで、ほら、あーん」
「……」
「あっ」

この手の冗談の度が過ぎるとセクハラになるのでは無いのだろうか。私は飴玉を奪って口に放り込んだ。リヒト先生は「ああ……」などと残念そうだ。

「僕からのささやかなご褒美が……」
「普通に飴玉くれたらいいですよ」
「え、僕からのあーんはご褒美にならないってこと……?」
「逆にですけどどうしてそれがご褒美になるんです」
「わあ……鋭い追い打ちだ……」

がくっと肩を落として「僕へのご褒美でもあるのに」と言った。……私へ飴を食べさせることが? 私は少し考えて、がり、と雨を噛んでしまった。

「え、美味しくなかった?」
「いえ、いつも美味しいですけど、そういう訳ならどうぞ」
「どうぞって?」
「あ、」

ぱか、と口を開けながら先生が食べようとしていた飴を指さす。「え」「え?」「ええ!?」いちいち大袈裟な人だ。

「先生のご褒美になるんですよね? だったらどうぞ」
「嘘? ほんとに? 自分を大切にしなよ?」
「いや、飴玉口に入れるくらい別に」
「……本当にいい?」
「さっきやろうとしてたじゃないですか……、どうぞ」

もう一度、あ、と口を開ける。リヒト先生はぴり、と飴の包み紙を開いて神妙な面持ちで私に飴を近付ける。……さっきはもっと軽い調子だったのに。変な人だ。

「……入れるよ」
「どーぞ」
「……」

……いくら待っても3センチくらいの位置から動かない。視線で「まだ?」と訴えるとリヒト先生は私の手のひらに飴玉を乗せた。
そして、顔を両手で覆って壁の方を向いてしまう。

「こういうのは、僕らにはまだはやいとおもう……」

なんだそりゃ。
私は本日二個目の飴を口に放り込んだ。


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20200119:断られるとわかってるやつはいいけどねってね

 

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