「おはよう」/ジョーカー


間が悪いのかいつもそうなのか、こいつは、眠っていることが多い。
仕事が休みの日を狙いすませていくのだけれど、あまり朝、と呼ばれる時間に起きて活動しているところを見かけない。
今日も十時頃部屋に上がるが勝手にテレビを見ても雑誌を眺めても。待てど暮らせど起きてくる様子がないから、十一時頃に寝室に入り込んだ。

「入るぞ、なまえ」

寝ているとわかっているが声はかける。返事はない。すうすうと眠っているので近くへ座って、髪を持ち上げたり落としたり、頬をつついたりするのだけれど起きない。相当ぐっすりだ。穏やかな眉間をぐりぐりと押さえてやりながら、つい、笑ってしまう。

「寝坊助め」

くつ、と喉の奥から音がした。
カーテンを開けて、ついでに窓も開けて換気してやると、ようやくなまえは「う、」と身動ぎした。寒いのだろう。

「……あ、れ? ジョーカー……?」
「おはようさん。いい夢見れたか」
「その、おはようさん、ての、かわいいね」
「何言ってんだ……、って寝るな寝るな。起きろ。天気いいぞ」
「んん……」

体を揺するとなまえが布団の中から細い腕をこちらに伸ばしてくる。

「んー、」

そっとその手を握ってやると、なまえは体を布団に沈めたまま、へらりと笑う。俺は、この瞬間が好きで好きで堪らない。こいつを叩き起すのは、一生、俺がやりたいくらいだ。

「おはよう」

あたたかいだけの時間が流れていた。


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20200105:寝てた。

 

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