皇帝特権/ショウ


騎士団の団長だなんて肩書きを平気で背負うだけあって強かだな、と私は思う。店の引きや本の引きが異常に良いからと頼まれて、ショートケーキを買ってきた。まあここまではおつかいだ。
誕生日おめでとうございまーす、なんてショウくんの目の前で箱を開けると「それで?」と彼は私を見上げていた。それで……?

「ああ、切りましょうかね。さすがにホールはしんどいね」
「……それだけか?」
「ん? ……あー、じゃあしかたない、誕生日だからね。私の秘蔵の紅茶でも入れようか。ロイヤルミルクティーにしてあげよう」
「……」
「え、全部ハズレ?」
「アタリではないな」
「誕生日プレゼントなら、昨日枕元に置いておいたよ」
「……感謝している。だが違う」
「ええ? そうしたら、うーん。もう私に出来ることは無いなあ」
「いいや。ある」
「あるの?」
「ある」

隣に座れと椅子を叩くので大人しく座る。と、ショウくんは私にフォークを差し出した。あ、ああ、あー、ええ? 気付かない振りをしてもいいのだが、あとが面倒か、と引き受けることにする。

「自分のペースで食べたくないですか?」
「余計な心配をするな」

公然とあーんを強請るのはかわいい者だけの特権と言えばまあそうで。私は仕方が無いのでケーキを切って紅茶を用意して、じゃあやるかあとフォークにいちごを突き刺した。「はい、アーン」

「……それからなのか」
「取っといても邪魔じゃない? 私は先に食べる派なんだけど、宗派がわかれたねえ」
「いや。俺も先に食べる派だ。早く寄越せ」
「はいはい」

うーーーん、さすがに美少年だ何をさせても文句無しの可愛さ。いちごを飲み込み、次をはやくと口を開けるのを眺めながら、でもこのバランスなのは今だけなんだろうなあと脳裏に焼きつける。
のだが、なにやら気に入らないことがあるようで、三口目くらいからむすっとしている。「ケーキ美味しくない?」「いや。美味い」ならばなんだろうと考えていると、ショウくんはじとりとこちらを睨む。

「貴公は俺が好きじゃないのか」
「んん? 好きですよ」
「そうか。俺もだ」

……うん「……はい次」と私は変わらずフォークにケーキを指して差し出す。「むぐ、」おとなしく食べているのだがやっぱりどこか不満げだ。「どうしたの?」聞いてみると、ショウくんはムッとした顔のまま言う。「これは」

「好きあっている男女の雰囲気ではない気がする」

私は一秒に満たない時間固まって、反動で思い切り笑ってしまった。

「あはははははは!!!!」
「なぜ笑う」

シャ、と刀が私の喉元に向けられて両手をあげる。からかったように聞こえたみたいだ。悪いことをした。「ごめんごめん」と謝ると、「なら」と、刀を向けられたまま彼が問う。下ろしてくれないのね。

「なまえ、お前は今、ちゃんとドキドキしているか?」

いや、ま、そりゃあね。(恐怖的な意味でだけど)


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20191225:おめでとう!!!!

 

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