20191212/カリム


「カリムッッッッ!!!!!!!誕生日おめでとうッ!!!!! ハッピーバースデイだゼ!!!!!!!」

と、朝一に食堂で叫んだのは、烈火星宮だった。ほとんどの隊員が聞いていて、この後促されるまま誕生日の歌を歌ったのだけれど、なまえは一人で焦っていた。
ちら、と小指にハマる指輪を見る。誕生日プレゼント、という訳では無いけれど、それに近しいものを貰っている身としては、放置できないイベントだった。

「……」

とは言ったものの、今日も普通に仕事だし、買いに行く時間などない。手持ちのものを渡すにしても、上司に差し出せるようなものは持っていない。祈りながら考えていたが名案は浮かばず、ただ今日できることははっきりしている。
……、ないものはないし、仕方がないかと立ち上がり、なまえはカリムの元へと向かった。
思い当たる場所へ行くとすぐに背中を見つけそっと近付く。もう驚かないが、声をかけるより早く「なまえ?」と呼ばれる。

「カリム中隊長」

振り返ったところで手の中で作っていた花火を爆発させる。小さく、爆竹のような規模だが、ぱぱぱぱ、と花が開いて、囁かな火の粉は花弁のように散って消えた。

「お誕生日おめでとうございます」
「……」
「え、あ、あれ? ち、違いました? 今日の朝レッカ中隊長が食堂で叫んでいらしたから、そうだと思ったんですが……」
「ああ、合ってるよ」

ぽかん、と口を開けていたカリムが、軽く頭を掻きながら言う「……びっくりして驚いただけだ」それから「ありがとう」と。なまえはほっと息を吐き、改めて「おめでとうございます」と笑った。

「……それで、ですけど」
「ん?」
「今日その、私、恥ずかしながら知らなくて、あげられるようなものはなにも、ですね……、すいません」
「別にいらねえよ、こうしてわざわざ祝いに来てくれただけで十分に十分だ」
「ですか……? でも私、これ、貰ってますし……、何が欲しいものとかあれば次の休みに買ってきますよ」

ぴく、とカリムが動きを止めてなまえの両目をじいっと見下ろす。

「次の休み」
「誕生日は過ぎちゃいますけど……、なにかありませんか?」

次の休み、と言うと。

「三日後だったな」
「ですね」
「なら、俺の買い物に付いてきて付き合うってのはどうだ?」
「! それなら私ケーキご馳走します!」

暗に「了解しました、行きます」と言っているのだけれど、カリムとしてはそんなにするりと了承されたらやや複雑ではある。
しかし、提案として不自然さがなかったことの証明でもあるか、と頷いた。

「よし、決まりだ。朝の祈りが終わったら直ぐに行くぞ」
「はい」

なまえは頭を下げて、早々に仕事に戻っていった。タマキに「なまえはカリム中隊長になにかあげたの?」と聞かれ「三日後一緒に買いに行くことになったよ」と答えた。それに対するタマキの反応はもちろん。「えっ、そ、それって……、」

「デートじゃん……」

……。

「何、着てけばいい?」
「そ、そんなの私にもわかんないけど、かわいいやつ! かわいいやつがいいって絶対!」
「かわいいやつってなに?」
「……スカートだろ! やっぱり!!」
「短いやつかな?」
「うん! 短いやつはかわいい!」
「短いやつはよくすけべられるから気をつけないと」
「なまえは大丈夫だろ、私じゃないんだから……」
「えーっと、で、何着てけばいいんだっけ」
「すけべられないやつだよ!!」
「そんな、タマキじゃないんだから……、あれっ?」
「んっ?」

デートまであと三日だ。


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20191212:おめでとうございます。

 

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