獄都事変 | ナノ


2019年バレンタインを巡る九つの戦い/平腹  




「「あっ」」

今度こそ失敗しないようにしよう。廊下でばったり会った平腹に声をかける。「センパイ!」挨拶からが基本だと思ったが、平腹に定石は通用しない。出会うなりタックルされかけたからひらりと躱す。平腹のタックルには即死級の威力がある。

「ぐえ」

平腹が私の後ろの壁にぶつかったけれど、ぶつかった壁が壁ではなくなっていた。平腹は「壁、弱いなー」と笑っている。笑い事ではもちろんない。

「壁壊すとまた怒られるよ」
「センパイが?」
「……確かに考えようによっては共犯かもしれないけど」
「ほ?」
「それより、ちょっと聞きたいことがあって」

ん? と平腹はひょこひょことこちらに近付いてくる。

「皆に何かあった?」

私が聞くと、平腹はかくんと首を傾げて言った。

「なんもねーけど?」
「な、なにもない? ほんと?」

うーん、と少し平腹は考えて、それからパッと顔を上げる。「ない」ないらしい。これ以上の情報は得られなさそうだ。というか、まあこれでも大分重要な情報ではある。つまり。何かしら起こってはいるが、平腹がキャッチできるようなことではない、という訳だ。

「……平腹はいつもどおりだもんね」
「オレ? オレは今から任務!」
「あ、そうなの」
「うん」
「センパイも行く?」
「私は今日別の任務」
「フーン。じゃあいってきます!」
「はい、いってらっしゃい。気をつけて」

「帰ってきたら新しいゲームやろーぜ!」と平腹はハンドも後ろを振り返りながら歩いて行った。私はそれを壁に空いた穴から見送った。
いつもどおりじゃないか。


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20190228:いつもどーりだ。

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