特務室のみんなに配る為のチョコの材料の買い出しに出た。玄関を超えたところで、後ろを振り返る。驚いた斬島が、門の陰に隠れたところがバッチリ見えた。し、なんなら隠れきれていない。
「……」
どうしたものかと考えるが、出てこないということは出ていきたくないということだろう。また何か新しい鍛錬の方法でも考えついたのかもしれない。しばらく放っておくことにした。
しかし、尾行にしてはひどすぎるし、私になにか訴えたいことがある可能性も考えられる。災藤さんといい抹本といい少しおかしい。斬島にだって、知らないうちになにかしてしまっていたかもしれない。
「……」
くるり、と振り返ると、また斬島は隠れてしまった。どうかしたのか聞くのがいいのか、それともこれは、私がなんとか気付かなければならない案件なのか。進むふりをして振り返ると、思い切り私と目が合った。転けそうになっていたがそれはどうにか踏みとどまって、斬島はじっと私の目を見詰めていた。
「あの、斬島、さっきから」
そこまでしたのに、今度は路地の影に隠れている。聞いて欲しくないのだ、と受け取った。あるいは、話がしたくないのかも。
そこまで嫌なら気にはなるがそうっとしておこう。
帰ったら、佐疫あたりに理由をこっそり尋ねてみることにして、私は斬島に尾行されながら菓子の材料を買いに出て、尾行されながら帰ってきた。なんだほんとに。
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20190212:核心には迫れない