獄都事変 | ナノ


determination(11)  




少し強めの力で肩を掴まれた。連れ立ってふたり歩いていて、いきなり肩を掴まれる時は、大抵、なにかを見つけた時だ。

「夜子」

見つけたものは、直ぐに教えてくれて、尚且つ、直ぐに。

「あれをやらないか」

試したくなるのがこの斬島くんである。私はそれについて、1度は見ていたが、見なかったことにしたのであまりもう一度見たくはないけれど、まあ仕方なくもう一度見た。何度見ても変わらない。1本のマフラーを分け合うカップルの姿があった。
私はわざとらしく斬島くんを見上げて確認する。

「あれ……?」
「あれは恐らく、恋人同士だろう?」

ならば俺達がやってもおかしくはないんじゃないか、ときっと言う。

「ならば俺たちがやってもおかしくはないな」

言った。私は自分がしているマフラーに視線を落とす。これは、彼らがまいているものとは形状が違うので無理だ。完全に一人用である。「まあ」これでは出来ないが、ふたりが入れる長さのものであれば、おかしくはない、かな。

「……」

おかしくはない、しかし、心の準備は必要だ。個人的には割とハードルが高い。ふたりで巻くことは出来ても外に繰り出すことは出来ないかもしれない。私はしばし沈黙して考える。斬島くんは私の返事を待ってはいるが、今にも「買いに行こう」と言い出しそうな雰囲気だった。
心の準備をする時間を稼ぎたいが。ああ。

「私が作ろうかな」
「つくる?」
「手編みのマフラーと言うやつだよ」

両手と指でマフラーを編む真似をすると、斬島くんはぱっと目を輝かせる。

「本当か!」
「うん」
「それはどのくらいで出来る?」
「え、うん、とりあえず今日は材料買って」
「ああ」
「どうだろ、ひと月くらいかな……?」
「ひと月」
「前作った時は確かそのくらい……いや、忙しい時期だったんだっけな……」
「前作った」
「うん、だからまあそんなに時間はかからないかもだけど」
「夜子」
「そのくらいみておいてもらえると安心かな」
「夜子」
「ん?」
「前作った、と言うのは」
「うん」
「一体、誰に?」

あ。
しまった、と思った時には斬島くんの機嫌を損ねていて、それはもう根掘り葉掘り彼が納得するまで色々聞かれることになった。


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20190101:とは言ってもそんなカップル割とレアじゃないかって。

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