なんだかんだこれが一番盛りあがったりするよね、と言いながら、意気揚々と売店に入って行った。みんなにも土産を買うからいいのだが、夜子は夢中で隅から隅まで回っていた。
一通り見終わると、俺の隣に帰ってくる。
「お土産買えた?」
「ああ。煎餅にした。イルカの絵が書いてある」
「いっぱい入ってるしかわいいね」
「夜子は?」
「私は飴と、ペン」
いろいろな水棲生物の絵が描かれた包み紙の飴。「職場になんとなく置いておく用ね」となると、ペンは特別に送る相手がいるのだろうか。
持ち手に星の砂が入っていて、書く度にさらさらと揺れる。……特別に、送る相手がいるのだろうか。
なんと聞き出したものか迷っていると、「ほら、色違いで私も買う」と、教えてくれた。……特別に、送る相手がいるようである。
しかも、夜子からの好感度もかなり高そうであった。
「それは、会社の人間か」
「そうだよ、ちょっと仲良くなった女の子」
「! そうか」
それならば特に心配することも無いし、そう気になるような事柄でもなくなった。
だが、揃いのペン、という部分を反芻するとどうにもそわそわとしてしまう。俺がまた違うものを買うのではおかしい、ような。
「あと、それからね、」
「ああ」
「かわいいティーシャツがあってね……」
「買わないのか」
「どうしようかな、と思って」
「どれだ?」
ちょうど部屋着が一着欲しかったからなあ、と夜子は考え込んでいる。夜子に連れられてティーシャツのコーナーへ来ると、随分味のあるイラストのシャツが並んでいる。「このアーティストさんとのコラボ商品なんだって」夜子は大きく息を吐きながらいくつかシャツを手に取って、最終的に、独特なイラストのサメが人間のように親指を立てているような、不思議なシャツが手に残る。次は色だ。黒と白と灰色で悩んでいる。
俺が何気なく黒を手に取ると、夜子はぱっとこちらを見上げた。
「それかわいいよね! 斬島くんも買うなら揃いで買うんだけ、」
「買おう」
「ど、う、うん」
「貸してくれ、夜子の分も買ってくる」
「へ、ええ? 大丈夫、自分で買うよ」
「いや、俺が買ってくる」
「でも」
「これでいいか?」
「あ、はい」
「よし」
夜子はぽかんと口を開けたまま、ややあって手の中に残った白のシャツを棚に戻した。
買い物を終えて店を出ると、俺はすぐに夜子に買ってきたシャツを渡す。夜子は照れくさそうに「ありがとう」と笑って、ぐ、とシャツを抱きしめていた。
デザインが相当気に入ったようだ。
俺は俺で、夜子と揃いで何かがある、と言うことが、思ったよりも気分が良く。俺も、袋の口を少し開けて中身を確認した。煎餅と、シャツが入っている。
「夜子」
「うん?」
「これを持って、遊びに行ってもいいだろうか」
「ん? ええと、私の家に?」
「そうだ」
夜子はひとつ頷いた。
「いつでも」
もっと困るかと思っていたが、そんな素振りは一切見せずに、ただ微笑んでいた。遊びに行くのは何時でもいいらしい。それならば。
「……次は、泊まっていきたいんだが」
次はいつまとまった休みが取れるか分からないけれど、時間があれば必ず。前看病していた時にしたくても出来なかったことをやってみたいと強く思う。
夜子は少し考えて、それでもへらりと笑っていた。それは了承ととってしまうけれど、いいのだろうか。
「うん、料理のレパートリー増やしとく」
伝わったのか伝わっていないのか、あるいは気づかなかったフリなのか。夜子は器用に表情を作る。
「リクエストは?」
「夜子が作るものならなんでもいい」
せっかく器用に作った笑顔を崩して、頬を真っ赤にしていた。夜子が、見た目ほど、自分を上手くコントロール出来ているわけでないことは、俺でも、少しだけ知っている。
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20180826:よく寝ながら書くからひでー誤字と日本語の時ある。