獄都事変 | ナノ


箱に詰められたい@/助角  




※唐突に箱詰めにされている話です

煙草の匂いがする。あと、暑いから、じわじわとお互いの境界線がわからなくなってくる。私はどうにかしようと壁を押すが、ピクリとも動かない。

「もたれかかってもいいが」
「いやいや絶対良くないですよ、助角さんはこんな時でも落ち着いてますねえ!?」
「なに、外の連中がそのうちどうにかするだろう」
「でも……」
「そんなことより」

なにがなんだかわからないが、私たちは箱のような場所に詰められてしまった。
私は、助角さんの脇のあたりに両手と、足の間に両足をつけている。助角さんは狭そうに壁に背を預けた状態だ。私の背はぴったりと天井についていて、助角さんに負担はない、はずだ。私も獄卒だし、ちょっとやそっと無理な体勢を続けたからと言って、壊れたり、痛んだりすることはない。

「久しぶりに、ふたりきりだな?」

じ、と助角さんに見上げられて、思わず「ひえ、」と声が漏れる。私はどうにか助角さんの視線から逃れたくて顔を逸らす、が、如何せんこの箱は狭いから、どう逸らしても視界に入る。
助角さんはただ楽しげにくつくつと笑っていた。せめて距離を取ろうと、助角さんの両横についていた手を左右の壁に移動させる。できる限り後ろに下がってから「そう言えばそうですね」と私も笑う。

「その体勢はキツいんじゃないか?」
「大丈夫です獄卒ですから」
「夜子」
「あーーー、勘弁して下さいむりですむりむり」

頭を抱えたいが我慢して、首だけをブンブンと振る。無理無理やめてくださいこんなときにそういう雰囲気を作るのは!!! 気持ちは届いているはずなのだが、助角さんは全く聞き入れてくれそうにない。
自分は足も腕も自由であるのをよいことに、すい、と手がこちらに伸びてくる。噛み付くわけにはいかないから、じっと助角さんを見つめていた。ぺたり、と手のひらが頬に触れる。

「来い」
「………」

尚も躊躇っていると、助角さんは「強情だな」と息を吐いた。私がおかしい訳では無い、はずだ。絶対に。絶対に。そのはずだけど、助角さんは私の腕を掴んで、無理やり自分の腹の上に乗せた。ひとが必死に耐えていたのに。

「不満か?」
「………………………………いいえ」

助角さんはく、と上機嫌に笑って私の頭を撫でている。不満などないが、状況は何も変わっていない。私と助角さんの距離が縮んだというだけ。
まったくどうしてこのひとは、こうも落ち着き払っているのだろうか。強い人というのはみんなそうなのか。私に修行が足らないのかも。

「夜子」

はい、と色々諦めた返事をする。私はもう完全に寄り掛かって、なんなら背中に腕でも回したいくらいだ。

「それで、どうする?」

どうする、なんて熱っぽい声で言われても。私は理性を失った訳では無い。失ってはいないけれど、タバコの匂いがする。くっついていてより暑いから、じわじわ熱が広がっていく。はあ、と、助角さんの上でため息をつく。どうする。どうする、かあ。こんな場所でできることと言えば。

「寝ます」
「ふ、そうか」

私は体重を預けきって目を閉じた。助角さんは私の言葉を聞き入れてくれた振りをして笑う。どうする、なんて言いながら、私に選択権などないことを知っている。

「そう言うだろうと思っていた」

案の定、私をずるりと持ち上げて、肩に私の顎を引っかけた後、腰のあたりを撫でられる。腰から下へ降りていく手は止められそうにない。
そんなことだろうと思っていた。


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20180718:私も○○しないと出られない部屋とか軽率に書いていきたい。

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