獄都事変 | ナノ


忘年会を無事終わらせる為のG/平腹  




忘年会前日、私は例のごとく夜遅くに帰ってきたのだけれど、どうにか明日の準備だけはして寝ようと景品を確認したりビンゴゲームに必要な備品を袋に詰めたりしていた。

「……あれ?」

特賞どこいった……?
頼んでおいた肉の塊が見当たらない。まだ届いていないのかもと思うが特に届けるのが遅れるとかっていう連絡も来ていない。迷惑かもと思ったが肉屋に連絡してみる。運良く連絡が取れたが、「お届けしましたよ?」と言われてしまった。じゃあどこかにあるのかも。

「あーーー!!!!」

と、これは私の声ではない。と言うか考え事をしていたせいで反応が遅れた。一秒も経たないうちに横から平腹がぶつかってきた。受け身も何もあったものではない。骨が軋む音がした。

「センパイじゃん!」
「ただいま、平腹」
「おかえりー、なにしてんの?」
「言うから退いて頂けるかね……?」
「えー」
「あと今夜中だから静かに」

平腹に潰されたまま人差し指を立ててシイ、と静かにするように促した。平腹は「わかった!」と少し音量を落としてくれたがどいてはくれない。私の腹の上に座っている。重い。と言うか平腹こそこんな時間まで何をしていたのだろう。

「私はね、明日の準備をしてたんだよ。忘年会やるでしょ」
「明日だっけ?」
「明日なんだよ。それで、ゲームをするんだけどね、景品の一番いいやつが見当たらなくて困ってるの」
「そっかー、困ってんのかー、大変だな!」
「大変なんだよね……。新しく買うにしてもどこ行ったのかくらい調べないと……」

本当にどこに行ってしまったのだろう。みんなをたたき起こすわけにはいかないから本格的な調査は明日の早朝から、となるだろうが。

「センパイ明日休み!? ゲームしよーぜ!」
「先輩は明日休みじゃない、ゲームはちょっとだったらやる……」
「マジか!」
「ほんとにちょっとね」

まあまずは、平腹がここに居るのだから、平腹にだけでも確認しとこうか。
私は私の上に馬乗りになっている平腹を見上げて聞いてみる。「ゲームはひとまず置いておいて」平腹はきょとんと私を見下ろしている。そろそろどいてくれてもいいのだけれど。

「平腹、今日私宛の荷物受け取ってない?」
「荷物?」
「荷物」

平腹は、少し考えて、考えた後、あ、と嫌な声を上げた。思い当たる節があったらしいが、彼にしては珍しく、私と天井とを交互に見ながら青い顔をしている。
事件は割合に早く解決しそうで、しかし私は呆れて大きく溜息を吐いた。もしかしなくてもこの反応は。

「オレ、それ、食った」

だろうと思った。私は腕を大きく広げて廊下に転がった。なんてことだ。でもなるほど。心配事が明日に続かないのは良いことだ。いやしかし、私宛の荷物を勝手に開けるまではいいが、食べてしまうとは何事か。平腹はようやく私から降りて、頭を下げた。

「ごめんなさい」

この時間までこんなところをうろうろしていたのは、きっとみんなが取り計らって、私に謝らせるためだったに違いない。「だからセンパイ待ってたんだった」と平腹は力なく言う。当たりだ。とは言え食べてしまったものは仕方ないので、もういいよ、と軽く頭を撫でておいた。

「ひとの荷物を勝手に食べないように」
「はい……」
「で、私は今日はもうゲームには付き合わない」
「えーー!?!」
「静かに」

さて明日は閻魔庁へ行く予定だが、どうにかしてまた新しく景品を仕入れなくてはいけない。予算はないし、一つ下の賞のものを特賞に持ってきて、一番下はやっぱり、肩たたき券でも作っておこうか。

「じゃあ、おやすみ、平腹」
「なら明日の朝なら!!?!」
「ゲームはしない。大人しく寝なさい」
「ええー……」

反省しているんだかそうでないんだかわからないが、平腹は「おやすみ」とどうにか私に言って、とぼとぼと廊下を歩いていった。
が、数秒すると走って戻ってきた。なんだ今度は。

「明日の夜なら!!?!」

私はとうとう、わかったわかった、と了承した。


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20171220:平腹と抹本と災藤さんムズイ

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