獄都事変 | ナノ


忘年会を無事終わらせる為のE/佐疫  




『忘年会、余興』と検索された画面を眺めながら、みんないろんなゲームを考案したり忘年会でわざわざやってみたりするものだなあと感心しきりであった。凝ったことをするつもりは無いが、ちょっとでも楽しんでもらえたらとみんなで遊べるゲームについて調べているところだ。
そんな私の姿を見つけた佐疫がいつものように「手伝います」と言いながら近くにやってきた。息をするように自然に手伝ってくれる姿には、有難いやら申し訳ないやら複雑だ。
ただ、彼の言うことは正しいので、つい頼りたくなってしまう。

「なんか景品あると盛り上がるよねきっと」

盛り上がらないよりは盛り上がる方がいい。そして公平なゲームがいい。私はしばらく考えるが、余興について世間の言葉を見ていると賛否両論のようで、まあ確かに田噛あたりは面倒だとか言いそうではある。谷裂も、もしかしたら口に出さないだけで面倒と思うかもしれない。
だとしたら、料理のグレードに予算を全振りする方がいい、そんな可能性が浮上してきた。私はその不安をそのまま言葉にする。

「ゲームとかって、もしかして微妙?」
「そんなことないですよ」
「ほんと?」
「景品が出るようなゲームなら、みんな喜んでやります」

佐疫がそう言うのなら、そうなのだろう。
私は深く頷いて、じゃあ、やっぱりやろう、と思考を続ける。

「さらっと終わって程よく盛り上がるようなのがいいなあ」
「そうですね」
「あ、これどう?」
「どれですか?」
「ビンゴゲーム、景品とかつけやすくない?」
「用意も簡単にできていいかもしれませんね」

百円ショップとかでゲームの用意は一式できそうだ。景品の買い出しは、また午後から行くとしよう。できれば誰かに手伝ってもらいたいが、佐疫はこのあと任務だと言っていた。まあ、またふらふらと館を歩いていたら、きっと誰かと会うだろう。
そうと決まれば、私はパチリとデバイスの電源を落とした。

「ありがとう、佐疫」
「無事終わるといいですね」
「不穏なことを……」
「俺も手伝いますよ」

私はもう一度ありがとう、と言っておいた。佐疫に手伝ってもらえるならそんなにいいことは無い。私も頑張って幹事を全うするぞと決めた。

「あの、ちなみに、一番いい景品は何にするんですか?」

一番良い。一番いいもの、か。

「やっぱ食べ物がいいんじゃないの? 美味しいやつ」
「でも、それも難しくありませんか?」
「A5牛とか欲しくない? 肉ならまあみんな好きだよね」
「うーん……まあ、焼けば食べられますからね」
「やっぱり、特賞はみんなが嬉しいものがいいね」
「……それなら、ですけど」
「うん?」
「先輩が」
「私が?」

佐疫の、爽やかな青色の視線が真っ直ぐこちらに向いている。私が、なにかすることが、彼らの為になるのだろうか。続く言葉を待っていると。佐疫は誤魔化すようににこりと笑っていた、本当になんでもないみたいに言った。

「いえ。なんにも」

なんでもない、と言うような間では無かったけれども、言わないのなら無理に聞くようなこともない。なにか名案があるのなら、聞きたかったのだけれど。

「そう? ならいいけど」
「なら、一番下の賞品はなににしますか?」

一番下、一番下かあ。

「肩たたき券とかかな!」
「……誰にたたいてもらえるんですか?」

そこはそんなに気になるところなのだろうか。私は少し不思議に思ったが、まあ、大したことでもないのでその場でさっと考える。

「うーん、私?」
「それは場合によっては特賞なんじゃ」

佐疫の言葉に、私は佐疫を覗き込んで顔色を確認する。いつもと変わらないけれど、みんなもそのように見えたけれど、実はとても疲れているのだろうか?

「え? みんなそんなに肩凝ってるの?」
「肩たたき券はやめて、ポケットティッシュにしましょう」

? 肩たたき券がお気に召さなかっただけ、か?

「じゃあ任務の合間にティッシュ入れ作ってつけよう」
「そんなことしたら最下位争いになるからやめて下さい」

まあ確かに、ティッシュ入れは便利かもしれない。が、最下位を争うほどに便利かどうかは分からない。なんだか話はいろんなところへ飛んでいるような。ついていけなくなってきてしまった。佐疫が心配していることはなんだろうか。

「……大丈夫? 肩たたこうか?」
「安売りし出すのもやめて下さい……」

あ、つまり、また気を使われているのか。
私がわざわざ手を下すと面倒くさくなるから全部既製品にしておけ、と。なるほどそれもその通り。
ただなんとなく頭を抱える佐疫が気の毒で、ぽん、と手のひらを佐疫の肩に置いた。

「たたかなくていい?」
「たたいて行ってください」

景品になる腕か見極めてくれ、と私が言うと、佐疫はそういう意図で言ったわけじゃないんですけどね、と力なく笑った。
その後、佐疫の肩をたたいていたら、いつの間にか佐疫の前に肩たたきの待機列が出来ていた。佐疫は溜息を吐いて半分泣いていたような気がする。
そんなに体の調子が悪いと任務に差し障るであろう。私はマッサージグッズを景品の中に入れようと決めて、景品を探しに館を出た。


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201712:佐疫は、いいぞ。言い忘れていましたが夢本と同じ夢主です。こちら夢本の雰囲気つかむためのシリーズになってます。宜しくお願いします。

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