その他夢 | ナノ






思い出すのは、学校の教室であったり、学園祭の準備で慌ただしくする廊下であったり。徹夜で調べものをした日の朝。なまえは何千年経った今でも、変わらず活動範囲の端から端まで走り回っていた。
無意味なことも無駄なことも、今更言うつもりはない。言ったとしても返ってくる言葉はわかりきっている。それにしたって朝はと言えば誰より早く起きて何やら仕事をしているようだし、夜だって、杠を手伝ったり村の連中を手伝ったりと、とにかく休んでいるところを見かけない。わかっている。必要がないからそうあるだけだ。現代でも大体同じだった。およそ止まっているということがない、そんな女。

「おい」
「ん? あれ、千空」
「あれ、じゃねーよ。いい加減にしやがれ」
「……ん? まだ大丈夫だけど……」
「てめーその体力の限界ギリギリ倒れる直前まで挑戦するスタイルいい加減やめやがれ」
「あ。現代ではバイトで時間全部潰れてたけどこっちでは体鍛える時間があるから本当にまだ大丈夫だよ」

猪突猛進のバカに見えて、冷静だ。これで案の定よくぶっ倒れる、とかだったらもう少し強く言えるのだが。「そうかよ」大丈夫、なら、大丈夫なのだ。やりすぎで倒れたところは見たことがない。大樹とは別の意味でかなりタフで、杠とは別の意味で器用なのだ。きっと緩急の付け方が上手い。器用貧乏を体現したような奴だからしかたがない。人手は常に足らねえんだ、ぶっ倒れないようにしろ、と吐き捨てておくつもりで口を開く。が。

「……お茶でも、貰ってこようか? 私はともかく、千空は休憩した方がいいよ」
「……」
「え、ち、違った?」

いくらでも無理をすることができてしまう今、「なまえ」「うん?」思い出すのは、夕日の差し込む科学部の部室だとか。俺の部屋。それから毎日の昼食の時間。千空は、の部分は気に入らないが、呆れるくらいにいつも通りだ。いつもっつーか。まあ、いつも、か。変わったことと言えば、環境くらいのもので。

「いや、違わねーよ。なら俺はなんかつまみでも持ってきてやらあ」
「ほんと? 実はちょっとおなかすいてて」
「だろうな」

すっかり安心してこれまた石になる前のように、挨拶みたいに抱き寄せたら、うっかりクロムに見られて少しの間作業効率が落ちた。クソ。知られたのなら仕方ねえ。せいぜい俺達に気を使いやがれ。


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20190903:せんくうせんせいのぬまのなかにいる

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