その他夢 | ナノ






人間には、どう足掻いても自力ではどうにもならないことがある。私は手近な山の頂上に立ってみるが、空は遠い。
崖のぎりぎりに立って、雲の上にいても、多分違う。得られない。しかたがないかと、ぼうっとしていると、突如、風をまとって雲を飛び抜け、ひとりのリト族が上昇して来た。「あっ」

「リーバル、」

草木を撫で付ける風に色をつけたら、きっとこんな緑になるのだ。ふわりと隣に降り立ったのは、リトの英傑、リーバルだった。「やあ、なまえ」彼は呆れたように言う。

「バカとなんとかは高いところが好きだって言うけど、まさか、君、ひょっとして……」
「うん、その通り」
「やめろ。僕はそんなことが言いたいんじゃない」

自分で言っておいて、認めたら強めに反論してくれた。私はあいまいに笑って、借りてきたパラセールの具合を確認した。「大丈夫、もう戻るよ」リーバルは探しに来てくれたのだろう。ゼルダには、ちょっと登山してくる、としか言わなかったのに、良くここがわかったものだ。

「待った。君、こんなところまで登っておいて、何も食べていないのかい?」
「ん? まあすぐ下りるつもりだったから」
「ふうん。それはともかく、実は今日、リト族秘伝のパンを焼いてきたんだ」
「へえ、リーバルは器用だねえ……」
「折角だから、ここで食べよう」
「……、えっ、くれるの」
「そうとしか言ってないだろ」

私は適当な岩の上に座った。「詰めて」と言われ、かなり隅の方に座ると、「詰めすぎだ」と怒られた。また少し元の位置へと寄ると、リーバルは満足そうに「よし」と笑った。
したいようにさせておくかと放っておいたら、肩に腕(羽毛?)を回して引き寄せてくれたからあたたかい。
すぐ降りるつもりで軽装で来ていたことを思い出した。通りで息が白く出るわけだ。

「ほら、食べなよ」
「……」

私は知らない内にリーバルを怒らせたのかも知れない。私に手を回したまま袋の蓋を開けて、パンを掴むと私の口の辺りまで持ってきた。「いやいや、リーバルさん」

「自分で食べれますヨ……」
「こんなところ、僕らの他には誰もいないんだから、大人しく甘やかされなよ」

言われた通りにパンを貰うが、うん、美味しい。流石はリーバルだ。しかしたぶんこれ、やっぱりちょっと怒ってるんじゃないだろうか。「ごめんね」と謝ると「全くだよ」と帰ってきた。

「空のことが知りたいなら、僕に言えばいいじゃないか」

空のことが知りたいのは、リーバルのことを知りたいからなのだけれど、今の温度が丁度いいので何も言わずに彼の羽毛にもたれかかった。


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20190622:一本は書かなきゃと思ったなどと供述しており

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