その他夢 | ナノ






「ホントにバカだな!」
「それはそう、そうだと思う」
「バカ言うな! お前のどこがバカなんだよ!!」
「じゃあまあ、そういうことで」
「調子に乗るなバカ!」

なまえは心底愉快そうに笑って、ウェイバーはただなまえを睨みつけていた。涙目であった。
ウェイバーの言いたいことも、自分の状況もわかっているので、怒ることは無い。と言うより、怒る必要性など見つからない。なまえは一人で頷いて、また「何勝手に納得してるんだよ!」と怒られていた。
なまえは、新しく作ってきてしまった傷を見詰める。正確には、見えているのはウェイバーが巻き直してくれた包帯だ。もう血が滲んだりはしていないが、彼にしてみればこんな傷でも、心配で仕方がないのである。

「大丈夫だよ」
「大丈夫な奴は怪我なんかして来ない!」
「ああ、そうかも」
「なーーにが、そうかも、だ! まったく僕がどんな気持ちでいるかお前にわかるか!?」
「ご心配をおかけしまして」
「そうだ! 女の子だってのに傷ばっかり増やしやがって!!」

同年代の、魔術師を捕まえて、女の子だってのに、とは。なまえはまた笑っていた。治るから大丈夫とか、気にしてないとか言うと、また泣きながら怒るだろうから言わない。得がたい気使いが傷に沁みる。「うん、ありがとう」となまえは笑って、さらさらとしたウェイバーの髪を撫でる。
怒られるかもとなまえは半ば覚悟していたけれど、以外にもウェイバーは黙ったままでおとなしく頭を撫でられていた。

「おい、なまえ」
「うん?」
「次はもっと上手くやれよ」
「……成果的には上手くいったほ、」
「上手くいってたら怪我なんかするわけないだろ」

上手くいかせるために怪我をすることもあるのだけれど。
なまえは曖昧に微笑んだ。怪我をするな、とはっきり言わないのは、それが無理難題だとわかっているからだ。ウェイバーの言いたいことは、なまえにちゃんと伝わっている。
ウェイバーが明言しないのと同じように、なまえもまた、はっきりと口にはしなかった。

「そうだね。私はまだまだだ」

だから、次は上手くやる。その次も、次も。そうして必ず、この小言を聞きに来る。なまえは立ち上がって、ウェイバーを振り返った。

「何か食べに行こう。心配させたお詫びに奢るから」
「……バカ、別に奢ってくれなくてもいいっての」

なにがいいかなあ、と、なまえは能天気に言って、そんなに血が出たんだから鉄分を取れ、と、ウェイバーは一般人のようなことを言った。


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20180815:ウェイバーちゃんが思いの外可愛くてむしゃくしゃしてやった、間違ってたらごめんなさい。


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