その他夢 | ナノ






眠っているなまえに手を伸ばすと、ハリセンを飛び越えて銃弾が飛んでくる。
だからなまえはこんなに無防備に寝ているのだろうか。そんなことを考えてしまうと、なまえと三蔵の間にあるなにか強いものがちらちらと見えてため息が出る。
なんでため息が出るかはお察しという奴で、深くは語らないがそういうの全部わかってるからセコムくんの壁も高いわ硬いわ……全くどうしたもんかなあと思ったところでまたため息。
まだ睨んでいやがる。
俺は手を引っ込めるとただ見るだけにしておいた。
見ている分には(相当機嫌悪そうにするけれど)何も言わなくなる。会ってすぐの頃は「見るんじゃねえよ、減るだろうが」と言われたりしたが「そこまで言う資格はないだろ」と言う俺の会心の返しにぐうの音も出ない様子であった。なんというかまあ正式に恋人とか旦那とかって肩書きを得たら何を言い出すかわからない。
移動中も膝に乗せ出すかもしれない。実際寒い時はなまえの取り合いになったものだ。
街を歩く時には流石になまえも起こされて、なまえはあくびをしながもしっかり歩いて俺たちについてくる。
街の喧騒に紛れるように、俺はなまえの隣を歩く。
それだけで言いようのない安心感を得られるのはちょっと病的な気もしていて、でも、得られるもんは得られるんだから仕方がない。
俺は一人頷きながら歩いていた。
と、服のはしを引っ張られてどきりとする。

「悟浄?」

なまえが、声を潜めて俺の名を呼ぶ。

「ん、おお、どした?」
「いや、なんか三蔵怒ってない?」
「あいつはいつも怒ってるだろ(心当たりはあるけど)、大したことじゃねーって」
「そう? ならいいんだけど」
「おう。気にすんな気にすんな」

「寝てる間になんかしたかと思って」「違うならいい」となまえは笑った。
なんかしたのは俺である、とも言わない。
それで話は終わったかと思っていたが、どうにもこちら側に視線を感じて隣を見ると、静かな湖畔みたいに光る、なまえの両目とぱちりとぶつかる。
なまえはふっと目を細めた。

「なまえはなーんか楽しそうだな?」
「いや、悟浄って人気者だから、こうやって隣歩けるのなんかレアだと思って」
「そーかぁー? なまえの方が人気者だろ」
「そうかな?」
「そーそー、主に」

こっそり指を指す。その先には滲み出る苛立ちを隠しもせずに歩いている、高名(笑)な坊主の姿。
「うーん?」となまえは首を傾げる。

「人気はないかな?」
「そーんなことねえべ」
「まあ、それはともかく。私は悟浄好きだよ」
「え、あー、いや、そ、そう真正面から来られると照れるっつーかなんつーか、マジで?」
「マジだよ。割とファン」

これはそういう意味じゃない。そうじゃない。そういうことではない。表情見ればすぐわかる。しかもファンだって言ってる……。

「居心地が良くて、つい寝ちゃうし」
「……」

いつも寝てるような気がするが、それでもうっかり嬉しい言葉だ。これは困った。信頼されているのはきっと俺たち全員だ。なまえは特別三蔵を信頼しているわけじゃない。

「なら、この後俺と遊びに行かね?」
「おー! 行きたい」

この話がバレたら、三蔵の機嫌は更に悪くなるのだろうけれど(でもなまえのことを強く止められないことくらい、もうみんな知っている)。
やはりどうにも、期待してしまう。
もしかして平等にチャンスはあるんじゃないか。
なーーんて。


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20170713:最遊記は、いいぞ!!!

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