turbulenceB/ウィンディ


「ただいま」
「お、帰った、」

私はぼろぼろの右手で挨拶をすると、ウィンディに無言で水の中に放り込まれた。ウィンディより軽い怪我だから、みるみる修復されていく。

「どういうことだ!」
「ちょっとその、リボルバーに、捕まりそうになって」
「リボルバー……!? で、あの下手くそなデータストームを出したのか!」
「んん」
「本当に! お前は! 救いようがないくらいバカだな!」
「おっしゃる通りで……」

私の不完全なデータストームは、私の腕も破壊しながらリボルバーに飛んで行った。なんというか、もう本当に散々だ。ウィンディはずっと私にバカだのアホだのと説教をして、ライトニングもライトニングだと続き怒りが収まる様子がない。だから、ライトニングは、ひとりでウィンディに会いに行け、と言ったのだろう。そして、この怒りをどうにか収めておけ、と、そういう事だ。無茶である。

「それで?」
「うん?」
「あいつらは何か言ってたか?」
「えーっと、ね、」

その質問にドキリとするが、ウィンディが言うのはイグニスたちのことである。リボルバーのことは聞かれていない。きっと、私が間抜けなことをして捕まりかけた、くらいに解釈してくれているのだろう。
今は、何も気付かないで貰えるとありがたい。

「だいたい皆、なんでそっち側なんだ、みたいなこと言ってたかな」
「フン、面倒な奴らだな」
「元気そうにしてたよ」
「おいおい、それがこれから戦うって敵に対して思うことか?」
「でも、元気そうにしてた」
「はいはいそうかよ。戦う時には戦えよ?」
「それなんだけど」
「なんだ? まさか今更嫌だとか言うわけじゃないだろうな?」
「ううん。そうじゃなくて、」

ライトニングにくっついて行って思ったことなんだけどね。ライトニングは、もしかしたら、私を、ハノイの騎士に対して人質として有効活用しようって考えているのかも。

「……そうじゃなかったら、なんだ?」

その気付きを彼に話すということは、そう考えるに至った理由を話すという事だ。私はぐっと言葉を飲み込む。

「…………やっぱり私、一勝も上げれなくない? ライトニングが一番弱いって倒しにかかったブラッドシェパード、全然私よりやると思うんだよね」
「はあ?」
「ほんとに、時間稼ぎになるかならないかって感じだなあ」
「はあーー……」

ウィンディは私の頭を軽く小突いた。「バカ」そして、頭突きで追撃された。「バーカ!」更に肩を押されて水の中に一度沈められる。顔を上げると、「いいか一度しか言わないからな」とウィンディの、顔がすぐ側にある。人間で言うところの両頬を固定されて、ちょっと頭の形が縦長になってしまっている。

「僕は、お前がやられる心配はしていない」

ああ、これは、どうでもいい、と、言われている訳では無い。

「なまえは確かにAIとしては欠陥だらけで阿呆の上大バカでマヌケでてんで役に立たない、救いようがない奴ではあるが」

ウィンディの赤く光る瞳のなかに、今、私だけがいる。

「お前が言うほど、お前は弱くない」

ウィンディに、隠しておく、なんて、私はきっと出来ないだろうな。そう思いながら、頷いた。私だって本当は、ウィンディより先に脱落するつもりはない。


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20190124:ほんとあの、好き勝手やっててごめんなさいね!!!!
 
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