ライトニングレポート/ウィンディ、ライトニング
「だってウィンディはほら、保護者みたいなものだし、しょうがないんじゃないですか」
ハルの言葉に、そうだろうかと首を傾げた。「ボーマンだって僕についてまわっていましたから」そうかもしれないと思いかける。しかし、彼らにそう言う特別な記号はついていないはず。
「なまえ」
試しになまえを呼んでみると、まるで自分が呼ばれたみたいにウィンディまで顔を上げた。
「君は呼んでいない」
「呼ばれてないな」
だが、それが当然、と、なまえと一緒に近寄ってきた。
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「なまえ」
また別の日、私はなまえしかいない廊下でなまえを呼んだ。その時はその場にウィンディがいなかったのに、通りかかって私たちを見つけるや否や私となまえの間に体を捩じ込んできた。
「君に用はないのだが」
「僕にだってないけど」
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ならば、と今度は、ふたりがいる場所で「ウィンディ」と呼んでみた。「なんだよ」と言いながら、何故か、ウィンディはなまえを回収して近寄ってきた。
「……」
「なんだ? 用があるんじゃないのかよ?」
「何故、連れてきたんだ?」
「何故って、こいつ近くで見てないと、この間データストーム暴走させて壁に穴を開けたの忘れたのか?」
なまえは項垂れて「その説はご迷惑を」などと言っている。何故彼らは、この状況がおかしいと思わないのだろう。ハルもボーマンも分かっているようだが、私だけが、どうにも事態を飲み込めない。何がどうなって彼らは、こんな風に連れ立っているのだろう。
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「ウィンディ、」
ウィンディしかいない時、彼を呼んでみると、流石にひとりで近付いてくる。
「……なまえはどうした?」
「なまえ? 今日はボーマンの話し相手になってるみたいだな」
「ひとつ確認したいことがある」
「?」
「君はなまえを、」
言葉に詰まる。どう聞けば、私の望む答えが得られるか。「なまえを?」ウィンディが繰り返す。彼が発するなまえ、という音声には親愛的なものが込められていることくらいはわかるが、それがどうして、ああなるのだろう。
「なまえを、どう、したいんだ」
「……はあ?」
ウィンディは両肩を落としてわざわざ脱力のリアクションを取ったあと。
「どうもこうも。ああでもしてなきゃ消えるぜあいつは」
放っておいたら消えるAIなど消えてしまえばいい。おそらく消えることは無い。しかし、ウィンディの言葉、彼女を構う理由に妙に納得してしまった。
だから私はひとまず、彼がなまえにしていることは保護なのだと結論づけた。
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20190121:(過)保護者