風のワールドで戯れるB/ウィンディ、エコー


この風のワールドは、僕がデータストームを操りやすいだけではなく、全体的に風が起こしやすい作りにしてある。だからなまえは、嬉嬉としてデータストームを操る練習に勤しんでいた。
いつもは、扇風機の微風にも劣る風しか起こせないけれど、今日ここでに限り、なんとか小さな竜巻を作っている。

「わー! 見て!」
「はいはい、見てるよ」
「すごい!」
「お前にしてはな」

ここで他のイグニスを待つだけだなんて退屈だと思っていたが、案外そうでも無い。なまえは毎回違うことをやっているし、データを操る力も着々とつけている。通常のネットワークの中でできるかは分からないが、それでも、感覚はつかみかけているようだった。
なまえはこうして風を操る練習を始めると、止めない限りずっとやっている。一度だけ、放っておいたらどれだけやっているのだろうと眺めていたことがあった。
これが散々な結果で、腕のデータが剥がれかけてもやめず、指先のデータが風化しかけてもやめず、このままではまずいと止めてやった。
あいつはきょとんと僕を見上げて、それからようやく両手がぼろぼろであることに気付いたらしく、無感情な声で「わあ」と驚いていた。仕方がないから手当をしてやって、それからだろうか。なまえとよく関わるようになったのは。

「今ならエコーの肩に飛び乗れるかもしれない……!」
「やめとけよ、落ちるから」
「大丈夫! 落ちてもエコーなら助けてくれるはず」
「まあ、机とか椅子にとびかかるより安全ではあるな」
「一回だけ! 一回だけ!!」

はー、と長い溜息を吐いた。行けたとしてもそんな力じゃ腰までだ。そうわかっていたが、僕はエコーを呼んでやった。小さく、「落ちそうになったら助けてやれ」と伝えておく。なまえは目を輝かせてエコーの肩のあたりを見ている。

「せー、のっ!」

飛び上がるが、やはり、全く高さが足りていなくて腰のあたりにぶつかりそうになる。飛び上がったなまえのテンションが先に落下していく。あーあ。やっぱり。ほんと。しょうがないやつ−、
僕もふわりと浮き上がると、突然、なまえを突風が押し上げた。僕ではない。もちろんなまえでもない。エコーにも無理だから、このワールドで生まれた乱気流だ。半分の実力と、もう半分は運で、なまえはエコーの頭に引っかかった。

「すごい! 見た!?」
「ああ、見たよ」
「ヤッター! 最高記録!」

運に助けられたのもきっと分かっているのだろうが、なまえは純粋に嬉しそうにしていた。僕はエコーの頭に引っかかっているなまえに言う。

「それでさ、なまえ」
「うん?」
「そこからどうやって降りるんだ?」
「あっ」

数秒絶望していたが、「帰りもきっと行けるはず」などと無茶なことを言い出して飛び降りた。完全に自由落下だったから助けてやると、「ありがとう」と気まずそうに笑った。

「別にいいよ。いつものことだしな」

木に登って降りられなくなるなんて、間抜けで仕方がない。(のに、なんでか、なまえのことを責める気にはならなかった。)


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20190119:たわむれ…たわむれ…
 
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