風のワールドで戯れるA/エコー、ウィンディ
散策するのは自由だけど、所々作りが雑だしトラップもある、気を付けておけよ。とウィンディが言ったので、私はあまり遠くに行かないようにしているし、行ったとしてもエコーについて回るようにしている。彼はどうやら、風のワールドに咲いている花などの手入れを任されている。
「これはなんて花?」
エコーに声をかけると、「はい、その花は、」と答えてくれて花の解説をしてもらえる。私はエコーについていって花の説明を聞くのがマイブームになっている。エコーが知っている、という事は風のイグニスも知っているのだろうけれど、なんとなく、エコーに聞くのが楽しいのであった。
「この花は、」
「うん?」
「……」
いくつか花の説明を聞いていると、エコーはおもむろにそのうちの一輪をちぎった。データを突然切りとったから、茎のテクスチャがじり、と揺れた。え、大丈夫なのか、これ、後で怒られるんじゃあ。私の心配を他所に、エコーの動きは止まらない。
肩に乗っている私に、花が差し出された。白い花弁が大きく開いた、まるで。
「……ええと、ありがとう」
エコーは答えなかった。私は貰った花を受け取る。我々のサイズには花は大きすぎて、受け取ってしまうと花の裏側しか見れなかった。まるで傘のようである。
しかも、無理やりちぎったデータの花は不安定で今にも消えてしまいそうだった。えーーーっと、こういう時は、あーー、んーーー? こう??
「あ、」
データの固定には成功したが、何故か倍くらいのサイズになった。完全に傘だ。私達は無言で、風のイグニスのところに戻った。私の姿を見て、彼は不思議そうに首を傾げた。
「……なんだそれ? このワールドには雨なんて降らないし、それじゃ完全に別の生き物だ」
「これ、もうちょっと、持ち運びやすいようにして下さい……」
「いいけど」
風のイグニスに渡すと、簡単にサイズを小さくしてくれた。「ほら、小さくしたからって落とすなよ」花は、私の頭の上に返された。エコーも風のイグニスも満足そうに頷いている。
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20190119:エコーは雑談とかしなさそ