繋がりの形/ハル


一体どうしてこれだけの規模が必要だったのか。私は館をうろうろとさまよい続けた。全部が人間サイズなのも気になるが、それはあれか。イグニスのサイズに合わせてしまうと小さくなってしまうから……、そういうことかもしれない。
ようやくハルの背中を発見したから、私は後ろから声をかけた。「ハル」ハルはばっと勢いよく振り返って、人間の子供のような笑顔を見せてくれた。「なまえ!」おや。ボーマンとの一件はそんなに尾を引いていないのかな? それならよかっ、ぐええ。

「丁度良かった、ちょっと聞いてよ!」
「わ、わかった……わかったから離して……」
「あ、ごめん」

それこそ人間の子供のように突然、私は体を掴まれて握られた。それなりに苦しいし、割と痛い。直ぐに話してくれたから、私はハルと視線が合うように、窓枠あたりに降ろしてもらった。

「さっきなんだけどあいつがさあ!」

今日はなんだか思いの外忙しい日だな、と私はハルの気が済むまで、ハルの話を聞いていた。



途中からは特に関係の無いビットブートのことだったり、光のイグニスのことだったりした。私の予測は正しくて、いろんなことが溜まりに溜まってたまたま、ボーマンの前で爆発しただけみたいだ。
私はただ相槌を打ったり、同意をしたりしただけだったんだけれど、どうにかそれで気持ちは落ち着いた様子である。

「はあ、なまえも手伝ってくれたらいいのに」
「え、手伝おうか」
「彼が許可しないよ」
「そうかな……」
「でも、せめてここにいる間だけでも……あ」
「ん?」

ハルはぱっと目を見開いて私を見下ろした。彼らの目はよく似ている。

「なまえが『姉さん』になってくれたらいいんじゃない!?」

ハルの突然の、姉さん、呼びに、なにやら胸のあたりが苦しくなった。なんだっけこれ。ではなくて、ハルとボーマンは大きさ的にもわかるけど、こんな一番小さいのが姉は無理がある。

「姿かたちが違いすぎるよ」
「大丈夫だって! たまーになまえが人間の真似してLINKVRAINSに混ざってるの知ってるんだから! 病弱で外には出れないって設定で!」
「えっ」
「いい考えでしょ、姉さん!」
「うっ」

なんか、感情があちこちに行って反応が大変だ。別に姉さんをやるのはいい気がするけど、っていうかこっそりLINKVRAINS行ってるのバレてるし、姉さんって呼ばれるとなんだか、ハルに対してちょっと特別な感情が生まれるような……。
ただ、本当に姉を名乗ることになるなら、それなりの覚悟というか……責任というか……姉ってそういうものだったような……。ちょっと一回調べ直す必要が……。

「でも、いいや、なまえはそのままで」

ずる、私は窓の枠から落ちそうになった。いいんかい。真剣に悩んで損した…。

「光のイグニスみたいなこと言うね」
「彼と同じ考えかはわからないけど」

もしかしてこの一連の流れ、からかわれていただけなのかもしれない。ハルはどんな顔をしているのだろう、と顔を上げると、あながち冗談ではなかったことがわかってしまった。さみしそうな笑顔だった。

「なまえはいつもどおり、そのへんで暇そうにしててよ」

あ、とハルが声を上げた。
私はハルの視線の先を見ると、ボーマンが立っていた。「じゃあ、僕は行くから」ハルに手を振って、ハルが完全にボーマンの方を向くのを確認した後、ボーマンにはぐっと親指を立てておいた。大丈夫、のはず。
何言か言葉を交わして、ふたりはその内どこかへ行ってしまった。よかったよかった。任務完了、だ。はあ、それにしても。

「やっぱり暇そうに見えてたのね……」


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20190118:ハルくん復活待ってますから
 
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