篝火の夢04(アクア)


風が冷たい夜だった。月は丸く明るく、白く光って空に浮かんでいた。(正しくは空ではない、などと、不霊夢だったり、ライトニングウィンディあたりは言うのだろう)私には正しいことがわかる時の方が少ないが、例えば真実か嘘かくらいならば。
などと考えていたからかもしれない。

「今日はまだ誰も来ていないのですね」
「そんなに毎日誰か来る訳じゃあないけどね。いらっしゃい、アクア」
「失礼しました。そうでしたね。お邪魔します、なまえ」

アクアは礼儀正しく腰を折って、ぺこりと頭を下げた。美味しいお茶でも振る舞えたら良いのだが、残念ながらそんなに気の利いたことは出来ない。もしかしたら、いつか、イグニスたちが独自の進化を遂げた時できるようになるのかも。
ただしその時まで、私が生きている保証はない。

「葵ちゃんと美優ちゃん元気?」
「そうなのです、その葵と美優とエマが、来週末家で女子会をするから一緒にどうか、と」
「なんだそれー! 面白そう!」
「もし参加ならなまえは甘いもの担当だそうです」
「オッケー! みんな苦手なものないかな?」
「甘ければなんでもいい、と」
「疲れてんのかな三人とも……、アクアは最近どう?」
「私は変わりありません、ですが」

デュエルディスクの上に行儀よく座るアクアの前に私も座る。アクアは幸せそうに小さく笑って。

「Aiは貴女と映画を観に行ったと言いふらしていますし、ライトニングは貴女が作ったレポートをこれみよがしに読んでいますよ」
「あれね……あれまだ読んでるの……? 大した内容じゃない上面白くないと思うんだけど……」
「きっと、内容など関係ないのでしょう。私はアースの後に借りることになっています」
「それは何番目なんだ……」
「ふふ、四番目です」
「なんだろ……新手のいじめなんじゃないかって気がして来たけど……?」

アクアはきょとんと目を丸くして「いじめ?」と、知らない英単語でも繰り返すみたいに首を傾げた。どこからともなく柔らかい水音がする。

「そんな風に思いますか? 本当に?」

答えなどわかりきったことをアクアが聞くから、思わず少し笑ってしまった。アクアでなくとも。特別な力がなくともわかる真実もある。

「ううん」

真面目な顔ができていたかは分からない。数回首を振って、アクアに向き直る。ただ、その真実をどういう言葉にするかは決めていない。
どれもこれも面と向かって言うには恥ずかしい言葉ばかりだ。そうだなあ。これにしようか。

「楽しんでもらえて、複雑ながら嬉しいです」

無駄なことが好きではない彼らがわざわざやるのだから、何かしら面白みがあるのだろう。アクアは少し考えた後、目を閉じて大きく頷いた。

「まあよしとしましょうか」


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20181203:んん……ヴのみんなかわいすぎぃ……
 
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