篝火の夢03(Ai)


天気が良くて空気が澄んで、これからなにかしなければ勿体ないような、そんな気がする昼下がり。こんな日は、大抵Aiが遊びに来る。
案の定、Aiがデュエルディスクからひょこりと顔を出す。

「よう、なまえ! 元気?」
「元気だよ。Aiは?」
「うーん、まあまあかなー?」
「女子高生か」

わざとらしく体をくねらせて言うのが面白くて、私もまたわざとらしくツッコミを入れて笑っておいた。穂村くんならまだしも、藤木くんはこういう遊びには付き合ってくれないようでAiは「ロボッピもリンクリボーもどんだけ教えてもこの絶妙な感じが出せないんだよなあ」と満足気であった。

「今日はどうしたの?」
「そうそう! 遊作も草薙も遊んでくれないからなまえと遊びに行こうと思ってさ」
「ロボッピとリンクリボーは?」
「俺を取り合って喧嘩始めたから置いてきた。ほら、俺ってば人気者だからさ。参っちゃうよなあ。人気者はツラいぜ! なー?」
「ねー」
「うん、さっすがなまえ! わかってるぅー!」

ぱたぱたと両腕を振って喜んでいるAiの頭を指先で撫でた。ふ、と指が離れると、人間がハイタッチをするように、軽くジャンプして私の指をぱち、と叩いた。

「それで、どこに行きたいの?」
「映画館!」
「いいね、行こう」

AIから料金を取るような映画館はないから、大人一人分の料金だ。今日はいくらになるだろうか。割引券がどこかにあったはず。たしか了見あたりにもらったものだと思うのだが、財布に入れっぱなしだったかな。
ふと、Aiがやたらと静かなことが気にかかる。

「どうかした?」
「いや、俺も大分人間についてわかってきた気がしてたけど、今、なまえは、」

「あー」とか「うーん」とかAiは体ごと首を捻って考え込んでいる。「何も思わなかったのかっていうか、それだけでいいのかっていうか、いや、でも、俺は、そういうの、きっと知っててここに来てて……そうだ!」Aiはぽん、と両手を打った。

「俺はなまえのそーいうとこ、す、」

嬉嬉としてこちらを見上げたと思ったら、次の瞬間にはピタリと動きを止めてまじまじと私の顔を見詰めていた。「ん?」たった一文字に、どうかしたのか、という気持ちを込めて口角を緩めた。「す、す、すー……」

「やっぱりなんでもない!」
「そう?」
「そう! 早く行こうぜ! 二時から上映のやつとか丁度いいんじゃないか?」
「そうだね、グッズを見る時間もあるんじゃないかな」
「もしかして買ってくれるんですかー?」
「藤木くんには秘密ですよー?」
「マジかよ! さすが! さすがなまえ! ちょっとグッズのデータ見てるから映画館ついたら呼んで……、うーーん、何がいいかなあ……先生! 予算はいくらですか?」
「そんなに高いのはあれだけど……、いいよ、好きなの一個」
「ハーーイ!」

Aiは上機嫌にディスクの中で、目当ての映画のグッズデータを眺めている。
映画館に行くことが初めから決まっていたのだとしたら、その上で、もし、ロボッピとリンクリボーの喧嘩が起こらなければ、彼ら(?)と一緒行ったのだろうか。
どちらもお金は持ってないだろうから、強請るとしたら藤木くんか、草薙さんになりそうだ。素直に映画料金を渡す藤木くんの絵は相当面白くて、想像だけで笑ってしまった。


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20181202:まあねAiちゃんのかわいさはうなぎ登りだから…。
 
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