篝火の夢02(ライトニング)


目覚めると雨音が低く耳について、眠っていたいという欲求は強まり、どろりと全身に絡みついた。
それでもどうにか起き上がって、簡単な朝食を取って自分の部屋に戻ると、デュエルディスクの上で、ライトニングが本を読んでいた。
もしかしたら、起きた時から居たのかもしれないが、私はようやく彼の姿を見つけた。

「おはよう」
「うん? ああ、おはよう」
「なんの本?」
「これは、君のPCに眠っていたレポートを書籍としてまとめ直したものだ」
「ひえ……すぐに捨てて……」
「データの整理はこまめに行っておくことを推奨する」
「それはその通りだけど」
「しかたがない。今回は私が預かっておこう」
「捨ててくれませんかねえ?」
「却下だ」

ライトニングは邪気のない顔で笑って、本をディスクの中に押し込んでから改めて私を見上げた。
パソコンの中にあった埋もれたデータなど、ろくなものでは無いはずだし、大体が学校の課題で適当に作りあげたものだ。使い道などありそうにないが。

「ちなみに一体何に使うの」
「何に、ということも無い。この情報は一般的にはなんの意味も価値もないし、なんなら所々間違っている。『使う』ことは困難だろう」
「なら捨ててヨ……」

わざわざ指を立ててライトニングは続ける。どうしてか新しいおもちゃを発見した子供のように得意気に。「だが」

「これには、君の情報が散らばっている」

覚醒しきる前の頭がゆっくりとライトニングの言葉を取り込んでいく。理解出来たかは分からない。が、言われていることはわかった。これから何を言っても飽きるまでデータを消してくれることは無い、ということもわかる。私がどんな表情でどんな言葉を返すべきか迷っていると、ライトニングは返事を待たずに両腕を広げた。

「つまり、私にとってはなかなか面白いもの、という事だな」
「……それはよかったね。飽きたら削除しておいてね」
「飽きたら、そうだな。データストームに投げ込んでおこう」
「飽きたら! 削除! しておいてね! お願いします!」
「残念だが次はAiに貸し出すことになっている。その次は不霊夢だそうだ」
「やめて切実に……」
「冗談はさておき」

ライトニングがまた本を引っ張り出して、あるページを指さした。目で近くへ来いと言われたから近付いて、本の中身をのぞき込む。確かに、書いたことがあるような、見たことがあるような文字たちが並んでいる。

「ここに書いてあることの意味が分からないのだが。なまえと言う人間は一体何を思ってこんなことを……」
「……さあ……半分寝てたんじゃない?」
「半分寝る? やってみせてくれ」
「いや……無理かな……」
「いいや、不霊夢曰く人間は無限の可能性を秘めているらしい。できるはずだ」
「無理だってば……」
「なまえ」

それから何度か名前を呼ばれてやってみせろとせがまれたが、私には、「無理無理……」と力なく首を振ることしか出来なかった。


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20181130:ライトニングくんも超好きです。夢を見過ぎている気がするけども。
 
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