見守る者/柊柚子


その言葉は私が全身で思ったことだった。

「柚子って、ほんとうにかわいいね」

言われた方は、目を丸くして驚いた後に、言われたことを飲み下す頃にはすっかり頬が赤くなっていた。

「な、なんなの急に……」
「なにも。今その話がしたくなっただけ」
「……変ななまえ」
「うん」

柚子のことは好きだ。
シンクロ次元で見せてくれた徳松さんとのデュエルには思わず無言で泣いていたし、私がぼーっとしているとわざわざ声をかけてくれたり。
他にもいろいろだ。、宿題を教えてくれたり、とにかくいろいろ世話を焼いてくれたりと、数えだしたらキリがない。
まあ、なんと言うか、私はこう思っているのだ。
柚子は本当にいい子で可愛くて。
何があっても幸せになってほしい、と。
私は幸せそうに笑う柚子が見られるなら、なんだっていいのである。
年のため言っておくと、私と柚子はただの友人だ。
同じく幼なじみではあるものの、まあ、彼らの絆と比べたら大したことは無い。

「遊矢なら遊矢でもいいし、なんでもいいから幸せになってほしい」

ぼうっと柚子を見ながら言う。

「も、もう! まだ続くの!?」

柚子はそんな風に言うが、気分なのだから仕方が無い。

「どう? 最近は? なにか悩みとかあったら聞くよ」

に、と笑って言うが、柚子は相変わらず展開についていけないらしかった。

「なんなのよ! なまえだって何かないの!? 気になる男の子とか!! なまえからはそういう話聞いたことないのに不公平だと思わない?」
「思わないね……、むしろ私はこんないい幼なじみを持って大丈夫なのかって思ってる」
「……まるで自分はいい人じゃないみたいに言うのね」
「まあ、いい人そうではあるかもしれないけど、いい人ではないかなあ」
「……」

ゆるりと笑う。
柚子は「はあ、」とため息をついた。
彼女の行く先を見ていたい。
風になって星になって、そんなふうに思う。
もう一度言うが恋愛感情ではない。

「なまえだって、大人っぽいし、本当に困った時はいつも一緒に居てくれるし、デュエルも強いじゃない……」
「んー、そうかなあ」
「そうよ……、この前だって私遊矢に……」
「……」

どうやら何か言われたらしい。
いつものことだが、私は二人がそうしてワイワイしているところも好きなので、特に何か言うでもないのだけれど。
そっと手を伸ばして柚子の頭を撫でる。
柚子がストロングなのは私も知っているし、からかいたくなるのも何かしら文句を言いたくなる気持ちもわかるが。

「私は好きだよ。どんな柚子も」

柚子が自分を許せなくても。

「柚子は可愛い大事な幼なじみだし。ね」
「なまえ……」

まだまだ人生は長いのだから、そんなふうに落ち込むことなんて一つもないのに。
いいや、この年だからこそ、私たちはこうして真剣に悩むことが出来るのかもしれなかった。
自分を高めようとするのはとてもいいことだ。
私もよく迷走するがどうにか歩いている。

「私も頑張るから、一緒に頑張ろ」
「……ふふ、ありがと。そうよね。うん。私も、頑張らなくっちゃ!」
「そうそうその意気だ。がんばろー」
「おー!」

ああ。
この笑顔がやっぱり好きだ。
この穏やかな時間が大好き。
だからどうか、柚子を幸せにしてあげて。
柚子が幸せでいられるようにしてあげて。

「で?」
「ん?」
「しらばっくれても無駄よ! なまえにも気になる人がいるんでしょ!?」
「え、こ、この流れでどうしてそんなことに……?」
「え? だっていま、私も頑張らないとって」
「ああー……、いや、私は別に……」
「まあ細かいことはいいじゃない! 誰? 権現坂?」
「いやいや……」
「あ、こら、逃げるな! 教えなさーい!」

ま、私のことはついででいいから。
ね。


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20160923:柚子かわいい。かわいい。
 
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