錆びついた約束06


06---一週間

なまえとの生活は楽しく、ストレスのないものだった。
もともと器用だったから、すぐになんでもやれるようになった。世界に慣れた方がいい、だなんて適当なことを言って、世界については触れないまま、一週間が経過した。
なんでもないような会話。なんでもないような食事。街に連れ出してみたりもした。遊馬先生の助言通り思い出のある土地に行くと、なまえは毎回ぽつりと「なつかしいね」と言って、当時あったことを一つ二つ口にした。記憶は少しずつ戻っているようだった。俺は俺のことも話をしたりして、だが、わからないことがある。話せば話すほど、知れば知るほど、思い出せば思い出すほどに、なまえは悲し気に笑うようになった。それはまるで、幽霊みたいな微笑みだった。
白い食器を拭き上げながら、なまえは、ぽつりと言う。

「ごめん」
「? なんで謝んだよ」
「うん。ごめんね」
「どうかしたのか」
「ううん。なにも」

元バリアンの奴らを紹介してやった。カイトもなまえの大人しい様子を見ると警戒を解いたようだった。遊馬や小鳥とは会えば挨拶をするし、なまえは、すっかりハートランドに溶け込んだ。なまえはここでまたなまえとしてうまくやっていける。困ったことがあっても、大抵のことならなんとかしてやれる。喧嘩っ早いところはあるが、目を離さなければ平気だし、俺の言葉はちゃんと届く。

「でも、ごめん」
「明日は、遊馬と小鳥と学校見学行く約束だろ。早く寝ろよ」

返事はなくて、次の朝、なまえはいなくなっていた。


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20190721:当時の私どういう話の分け方してんの…?
 
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