電車/ライトニング


適当に走り込むと必ず方向を間違える。分かっているので事前に調べて迷わないように行動するようになった。しかし最近は、頻繁に家に遊びにくるAI達がせっせとナビをしてくれたりするものだから、前もって調べておいた情報が、よく役に立たなくなる。
私の行動計画を見せると、ウィンディとライトニングあたりは青ざめて「なんて非効率的な」と嘆いている。私が30分かけて作成したものを3秒で改善させてしまう。

「次の駅まで五分ほどで着く」
「うん、あの、うん」
「なんだ?」

ライトニングは私と一緒に窓から外を眺めていたが、私の返事の歯切れが悪くて、こちらを見上げた。電車にくらい、一人で乗れるけど、と言うとライトニングは間髪入れずに「嘘をつくな」と肩を上下させた。……効率の良いルートを示してくれることは、ありがたいから、まあ、良いけれど。

「……ふらっと、見たことないような駅で降りて、散策してみたくなる時ない?」
「ふむ。それにはなんの意味がある?」
「さあ。なにか、いいものが見られるかもしれないし、そんなことをしたって事実が面白い気もするよ」
「……私たちが理解しやすいように言ってくれ」
「わざわざ、やってみるっていうのがいいんじゃないかな。ぼうっとしてたら、まずそんな事しないで人生進んでいくもの」
「……確実にそこにあるものを見に行く訳ではなく?」
「そう。面白いかったり、綺麗だったりするものを探しに」

ライトニングは、無駄な時間になってもいいのか、と聞きたそうだったが、私はへらりと微笑むことで返事をしておいた。大した問題ではない。よく迷子になることで、そんなものには慣れている。「理解した、とは言い難いが」

「ちゃんと帰って来られるように、ついて行くくらいのことはしてやってもいい」

目的の駅に着いたから、電車から降りる。この日はなんとなく、きっと知らない街に行く電車の後ろ姿を見送っていた。


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20190720:イグニスと街歩きさせて。
 
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