ひとつ/ライトニング


「私のやろうとしていることは、間違っているだろうか」

手元で組み上げる化け物を見下ろして言うので、私はじっと考える。独断専行ではあるが、私もそれを止めてはいないのだ。いや、正確には「あまり良い結果にはならないかもしれない」くらいのことは言った。彼は「君が言うなら、そうなのかもしれない」と無表情であった。

「……思うに」
「ああ」
「……いや、ううん、私にはわからない。正しいことが何なのかなんて」

光のイグニスが私の傍に来て、ぴたりとくっついた。データで出来た皮膚、個体と個体の境界線は今日も曖昧で、油断すると溶け出してしまうのではと心配になる。
ちゃんと体はあるだろうかと手を滑らせると、光のイグニスの手に捕まった。

「……君は、何も望んではいないのだろうな」
「そう見える?」
「実際そうだ。私は君が他人に何かを望むのを、聞いたことが無い」

せがまれることはあったとしても、せがむことはないだろう、と彼は言った。私はきっと、感情がどこか希薄で、確実に言えることばかり探している。AIとしては、正しいかもしれないがイグニスとしては欠陥品だ。

「風のイグニスに、データマテリアルの扱いを教えてもらったりしたけど」
「……確かに、その案件なら風のイグニスが適任ではあるが」

複雑そうに納得した光のイグニスに、私は思わず吹き出してしまった。「なにが面白かったんだ」答えずに笑っていると、腹の上にのしかかられた。重くはないが少し苦しい。退いてくれと頼んだが、なかなか離れてくれない。データしか入らない平べったい腹に、なんの用事が。

「ここへいきたい」

それはどういう感情なのだろう。今度こっそり調べておこうと思う。


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20190704:人間ではない

 
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