真面目な話/スペクター


なまえのスケジュール帳の表紙が7月に変わっていた。まだ6月の頭なのだが、随分気の早いことだ。
しかし、彼女の奇行には大抵理由がついており、その理由がまた下らなくて面白い。世間の学生たちはもっと真面目なことを真面目に悩んだりしているだろうに、彼女の行動はどうにも間が抜けていて笑えるのである。昔からそうだ。

「それ、どうしたんですか?」
「……こんなもんによく気付くね……」

スケジュール帳を指差すと、なまえは諦めたように息を吐いた。
手帳タイプのスケジュール帳で、表紙に小さなカレンダーが差し込まれている。なまえはそれを取り出した。6枚の紙が出てくる。それぞれに裏と表がカレンダーになっているようだ。

「これね」
「はい」
「多分一枚捨てた」
「ははあ」

なまえは真面目な顔をして続ける。

「買ってすぐに、たしかに一枚ゴミ箱に捨てた記憶があるんだよね。もう過ぎてる月のだったからいらないかなってさ。そしたら、たぶん、その裏が6月のカレンダーだった」
「相変わらず、迂闊な人ですねえ」

笑ってやると、なまえは何故か得意気に「ほんとにね」と笑った。馬鹿にされていることを理解しているだろうか。

「馬鹿にしてるんですよ?」
「わかってるけど、君が今日一楽しそうにしてるからいいんじゃないの」

本当に迂闊な人だ。
こんなことだから、私がしっかり見ておかないと危なっかしくて仕方がない。


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20190611:楽しくなってきたもんでつい…。
 
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