LOST&LOST(END)


これはこれで苦しいだろう、と私は考える。
なまえの家族は、なまえを変らず受け入れて、なまえは本心を隠したまま笑っていた。まだ、笑っていたくない事も、いなくなりたいというのが本心である事も理解している。
不安定で危うい。だから閉じ込めていたのだけれど、私はなまえの強さも知っている。苦しくても、きっと、彼女は生きていける。生きていけてしまう。
退院するとすぐに学校にも通い始めて、友人を作ったようだった。家でも学校でも何事も無かったかのように、人間らしく過ごしている件については、流石と言わざるを得ない。
これでいい、このまま、放っておくのがきっとなまえの為になる、そう思っているのだが、どうしても、なまえとの繋がりを捨てることが出来ない。
底のない空を、正しくある海を、街を染め上げる赤を、かがやく闇を、冷静な光を、そして、形のない風を見つめた時、なまえの目が孤独に耐えるように潤んでいるのを知っているせいで、とてもではないが、一人にできない。
なまえの腕を引いてやりたくて、つい、隣に立つ。
スターダストロードを見つめる彼女の背は、華奢だが真っ直ぐだ。こちらに気付くと、やはり、少し、距離を取られた。

「ああ、また監視?」

それでもなまえは、悩んで苦しんだ末、大きな決意を固めたのだろう。誰を憎むでも恨むでもなく、私とも、友人のような声音で話をするようになった。
彼女に必要なものは私ではないのだろう。だとしても、しかたがない。私は首を左右に振った。「いいや、これは監視ではない」これから何が起きても変わらないことがある。「勘違いするな」私は、なまえがーー……。

「……ちゃんと生きていることを、確認しに来ただけだ」

なまえは目を丸くして、きょとんとして、すぐに微かに目を細めた。かなり控えめではあるが、これは、彼女の心からの笑顔だ。

「了見って、もっと頭がいいと思ってた」

了見、と、彼女が私をそう呼ぶのを、久しぶりに聞いた。なまえは直ぐに視線を海に戻してしまう。いつもなら残念で堪らないのだけれど、今日に限ってはそれでよかった。
無表情ではいられない、呼吸も忘れて、たぶん、その刹那、心臓も止まった。
体の中に様々な衝動が湧き上がっては理性に押さえ付けられる。ここまで来たのに、もし感情のままに行動を起こしたら、友人ですらいられなくなる。
この距離感は手放さない。

「どういう意味だ」

極めて普通を装って、なまえと同じ景色を眺めた。


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20190608:次以降はアニメの展開次第という所で…。
 
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