LOST&LOST(4)


起きると、勝手に花が飾ってあった。
昼起きると居るとか、朝起きると居るとか、夕方起きると居るとか、パターンは色々だが、退屈で暇で仕方がない私には寝るくらいしかやることがないせいで、寝ている間に勝手に侵入されてしまっている。
咎める気もないが、許されていると思われるのも困る。毎日来ないで欲しいことには変わりがない。

「なにこれ」
「殺風景だったからな」
「……」

確かに窓際が鮮やかになりはした。得意げな顔を見もせずに、「ふうん」と小さく息を吐く。花は綺麗で、悪くは無い。鴻上了見に礼のひとつでも言うべきであろうとは思ったが、やたらそわそわちらちらとこちらを気にしているから口を閉じた。
あまり持ってこられても困る。期待されても困る。私は彼の望むものを返せない。
ふと、窓から、風が吹き込んできた。
窓のガラスにぶつかり、花瓶の花を揺らして、
私のところへ届く。風に、花の匂いが乗っている。
口の中で、ぽつ、と呼ぶ。ウィンディ、と、呼ぶ声は鴻上了見にすら届かなかった。

「そんなものでもあれば、少しはお前の暗い顔も、」

了見の言葉がそこで止まったのは、どうしてだったのだろうか。私はじっと窓の花を見ていた。風に乗って、甘い匂いも漂ってくる。目を閉じたら、声までする。
なまえ。
本当に、あえなくなってしまったのかな。
本当に、どこを探してもいないのかな。
もう二度と、迎えに来てはくれないのかな。
やっとこの気持ちに、名前をつけられたのに。

「難しいものだな……」

了見が何か言った。隣に居るのはわかっていたが、どうにもならなかった。声もなく音もなく、涙が一筋、シーツに落ちた。


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20190531:待ってやれやあ…
 
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